モラル、ホントに堕ちたの? 電車内レイプ「乗客、見てみぬふり」報道に逆風

 昨年夏、JR北陸線の特急電車内で、解体工の男が隣に座った女性を「殺すぞ」などと脅してトイレに連れ込み強姦(ごうかん)した事件。同じ車両に40人もの乗客が乗り合わせていたが、車掌に通報したり制止した人がいなかったことが「見て見ぬふりを決め込むな」(毎日新聞4月24日付社説)、「信じられない卑劣さ。日本人のモラルは地に堕ちたのではないか」(インターネットニュース「J-CASTニュース」)などと報じられた。これに対してネット界では賛否両論が続出。「決め打ち」とも取れる報道は「ちょっと待った」の大合唱も引き起こしている。(イザ!編集部)

 事件は昨年8月3日夜、JR北陸線の富山発大阪行きの特急「サンダーバード」の車内で発生した。男(36)が福井駅を出発後、6両目の女性(21)の隣に座り、「警察に言ったらストーカーするぞ」などと脅してトイレに連れ込んだ。強姦容疑で逮捕されたこの男、同年12月にもJR湖西線で同様の事件を起こして公判中で、容疑を認めているという。

 卑劣な犯罪に怒りの声が高まるかたわら、非難の矛先は同じ車両に乗りながら助けることがなかった乗客にも向けられた。衆人環視下での凶行であればその非難も理解もできようが、果たして乗客は犯行を知りながらも怖くて助けることができなかったのか、単なる痴話ゲンカだと思ったのか、それとも何かの撮影かとでも思ったのか…。真相は未だ「藪の中」で報道は流され、よくある「大衆のモラル低下」で落ち着くかにみえた。

 これにネットユーザーが「待った」をかける。当のJ-CASTニュースには「ヒステリックな乗客バッシングに少し水を差させてもらいます」「彼らの関係をはっきり理解しない限り、あきらかな異常を感じない限り何も言わなくてもそれほど不思議ではないのでは?」「犯人が 100%悪いんだから、乗客を批判する理由がわからん」「偽善もたいがいにしろ」などと書き込まれた。

 特急列車の車両内という密室での犯行状況を巡って喧々諤々の「2ちゃんねる」は、「(毎日新聞は)『薄ら寒い世の中』って言いたいだけだろ」「都心でなら電車で怒鳴り散らしてる人間なんていくらでもいるぞ」「誰も気付いてなかったら通報できない。それなのに見て見ぬふりという証拠もない捏造をしている」との反論も。イザ!ブログにも「乗客は強姦されている女性を見て見ぬ振りをしたような印象を受けるが、これは報道の仕方に問題があると思う」とのコメントが寄せられた。いずれにせよ一連のこの騒動、「日本の大衆」イコール「モラル低下」、「日本人」イコール「事なかれ主義」などの図式では報道が成り立たないことを改めて浮き彫りにした。

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