仙台市太白区秋保地区でワイン造りに熱中するアーティストがいる。同市を拠点に活動するロックバンド「MONKEY MAJIK(モンキーマジック)」のブレイズ・プラントさん(44)。自らブドウ畑を開き、昨年は900本を醸した。「ゼロから面白いものが生まれるのは、音楽もワインも同じ」。仕事でも趣味でもない生き方を追求する。
(編集部・小関みゆ紀)
2000本のブドウの木に新芽が顔を出した。4月下旬、ファミリーネームを冠した畑「プラントビンヤード」。「また忙しい一年が始まるよ」と嘆きながらも、新芽の成長をいとおしそうに眺めた。
もともと「ノムリエ」を自称するほどのワイン好きだ。古里のカナダから日本に移住する前から「ちっちゃいブドウ畑をやるのが夢だった」という。
転機は2016年。100日間のツアーを終えて立ち寄った秋保ワイナリーで毛利親房社長(56)と出会う。毛利さんが英語が堪能だったこともあり、意気投合。翌朝からブドウ畑通いが始まった。
17年には念願のブドウ畑0・37ヘクタールを地区内に確保した。家族や仲間と一緒に雑木や竹を伐採し、ウッドチップや畝の囲いに加工。譲り受けた木材やパイプを再利用し、仲間との憩いの場になるようにとあずまやも建てた。
自分の畑で収穫したブドウを使い、秋保ワイナリーの設備を借りてワインを仕込んだのは21年。ブドウは植えてから収穫まで3年を要する。「自分で育てたブドウで造るワインは特別だった」と振り返る。
コロナ禍で音楽活動が止まり、ブドウ畑で過ごす時間はさらに増えた。畑は2・4ヘクタールに広がり、栽培するブドウはカナダ産の「バコノワール」など7種類になった。
「音楽はマインドを、ワイン造りでは体を使う。いいバランスだね」とブレイズさん。古里から約1万キロ離れた秋保に根を張るブドウの成長を感じるたびに、家族や仲間と東北で生きる喜びをかみしめる。
自前のワイナリー開業は頭の片隅にあるが「まずはできる範囲のことからやりたい」。来年か再来年には誰でも遊びに来られる場所にしたいと夢を膨らませる。昨年仕込み、熟成させたワインは6月ごろから販売を始める予定だ。