ヤドカリ、ハマグリ、アワビなどを“爆狩り”する訪日中国人 牡蠣の殻の不法投棄に地元住民は「勘弁して」

今年6月、沖縄県内の離島でオカヤドカリを約680匹も捕獲した中国人夫妻が、文化財保護法違反で逮捕された。

 2人は当初「観光目的で沖縄に来た」「食べる目的で獲った。獲ってはいけないものとは知らなかった」と説明していたが、その後「販売目的だった」と容疑を認めた。

 茨城県の大洗海岸や三重県桑名市の海岸などでは、昨今ハマグリを爆狩りする中国人観光客が目立つという。

 6月にはあるYouTuberが大洗海岸の採取禁止エリアでハマグリを捕る中国人を問いただす動画をアップし、大反響。再生回数が50万回を超えた。神奈川県横須賀市でも中国人によるサザエやアワビの密漁が頻発していると報じられた。

 関東近郊のとある海浜公園にある露店の店主が嘆息する。

「6月以降に中国人観光客が一気に増えましたね。大半はごく普通の観光客なのですが、なかには観光バスを連ねて来て、アサリやハマグリをバケツいっぱいに採っていくグループがあります。

 そういう集団はきまって大潮の時期に来るんですよ。この時期はたくさん貝が採れるとわかっているんでしょう。おかげで浅瀬の貝がなくなっちゃって、潮干狩りに来た親子が全然採れないなんて日もあるんです」

 8月初旬、この海浜公園で潮干狩りをしている中国人観光客一家(広州出身)に声をかけた。

「自然のアサリが採り放題なんて最高です。中国のアサリは遼寧省産が多いんだけど、それより大きくていいね。それに中国のアサリはたくさん農薬を使ってるから(苦笑)、日本のほうが安全で美味しそう」(父親)

 そう言ってバケツいっぱいの戦利品を見せてくれた。ただし、持ち帰れる量には制限があることを伝えると、「ええ!? そうなの?」と驚いた。

 千葉県市川市の江戸川放水路河川敷では、ここ数年、不法投棄された牡蠣の殻に悩まされてきた。

 牡蠣の殻の回収やパトロールに当たっている市民団体「妙典河川敷の環境を守る会」の藤原孝夫会長が語る。

「河川敷で遊んでいる子供が転んで手をついたりすると、牡蠣の殻で大怪我をしてしまう。救急車を呼ぶ事態になったことも何度もあります。始まったのは5年ほど前からで、中国人とみられる人たちが牡蠣を大量に採り、その場で殻をむいて身の部分だけを取り出して殻を河川敷に捨ててしまうんです。

 牡蠣の殻をむけば大量に持ち帰ることができる。業者らしき人が車で来て、大量の牡蠣を車に積み込んでいるところを見たことがあります」

 市や同会をはじめとする環境保護団体が回収などの対策に乗り出したため、最近は大きな事故は起きていないが、捨てられていた牡蠣殻は最大で100トンにものぼるというから驚きだ。中国のSNSでは、日本にある牡蠣の乱獲スポットが紹介されており、中国人観光客が多く訪れる。

「もともと江戸川の河口部には牡蠣が多く生息していて、漁業権がなくても牡蠣を採ることはできます。ちゃんと殻も持ち帰るのであればね。でも、彼らはそうしない。

 殻をその場に捨てている中国人らを注意しても、聞く耳を持ちません。私たちの姿が見えなくなったり、別の日になると同じことをする。注意しても“日本語わかりません”と素知らぬ顔をされることもあるし、本当に勘弁してほしい」(藤原氏)

 市川市では今年3月、牡蠣殻を捨てることを禁止する条例が施行された。違反者には5万円の罰金が科される。

ルールを守ると馬鹿を見る

 各地で相次ぐ中国人観光客の爆狩りについて、北京在住経験のある中国ウォッチャーでライターの如月隼人氏はこう話す。

「日本と中国では、規則や規範に対する意識が大きく違う。日本では“みんなで決めたルールだから守らなくてはいけない”と意識する。しかし中国では“上の人間が下の人間を縛るためのもの”であり、ルールを守っていたら馬鹿を見るという考えが根強くあります。

 また、明文化されていなければ守る必要はないという意識も強い。日本でいう『暗黙の了解』という言葉がなかなか通用しないのです」

 無論、中国にも日本人の価値観に近い人々はいるし、文化の違いに優劣はない。ただ、悠久の歴史によって育まれた中国の文化は、日本と大きく隔たりがあることは知っておく必要がある。

「中国社会は損得に関する競争心が育まれやすく、“損をする人間=愚か者”という価値観が定着している。逆に言えば、他の人が気づいていないうちに、うまく利益を得るのは賢い人間。セミの爆狩り動画をアップした女性も炎上など予想しておらず、鼻が高く誇らしい気持ちだったのではないでしょうか」(如月氏)

 郷に入れば郷に従えと考えるのも、日本文化の押し付けなのだろうか。

※週刊ポスト2023年9月8日号

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