ヤンキース入り決定 田中伝説 第2章

プロ野球、東北楽天の田中将大投手の米大リーグ、ヤンキース入りが決まった。23日、東日本大震災被災地のファンや高校時代の恩師から、日本を代表する投手の新たな挑戦に期待の声が上がった。
 ついに決まった。世界最高峰の舞台で、プロ野球史上最高の投手に上り詰めた田中投手がどんな活躍を見せるのか、担当記者として楽しみだ。と同時に、仙台であの勇姿が見られないと思うと寂しい。
 入団当時は万年Bクラスのチームだった。その中で、背番号18の勝利への執念は際立っていた。練習から手を抜かず、投球フォームの研究に余念がなかった。シーズン中は酒類は避け、バランスの良い食事を心掛ける。高いプロ意識には尊敬の念しかなかった。
 当然、野球に対しては周囲にも厳しかった。練習も試合でも、手を抜く選手には容赦しない。話そうともしない。たとえ先輩であっても。ともすれば反発を招きかねないが、ぶれなかった。だからこそベテランも若手も信頼し、田中投手を囲む輪は逆に広がった。
 それが結実したのが、昨年の初の日本一だった。成績だけでなく精神面でも模範となった右腕の功績は大きい。あるベテラン投手は星野仙一監督に「今までは自分のことしか考えなかった。チームの順位は気にしなかった」と語った。新人王の則本昂大投手は「全てを見習いたい」と、エースの魂を継承する覚悟を示した。田中投手はチームに化学反応を起こし、弱小球団のDNAを払拭(ふっしょく)した。
 エースが次に選んだのはヤンキース。日本で無敵の25歳は常に高いレベルを追い求める。米大リーグ入りは当然の流れ。その中でも優勝を義務付けられた名門球団が最適だと思う。今度はどんな変化を見せてくれるのか、一ファンとなって見守りたい。
 仙台は23日朝、雪が舞った。まるで別れを惜しむかのように。だが、東北との縁が切れるわけではない。もちろん東日本大震災も忘れることはないだろう。自らが発起人となった、同じ1988年生まれのプロ野球選手による「88年会」の震災復興支援活動もある。
 「いいニュースを届けたい」。米国での活躍はきっと、復興の途にある被災地の大きな励みになるはずだ。(スポーツ部・中村紳哉)
◎愛しきマウンドに一礼/コボスタ田中会見
 「これからも、自分のスタイルでプレーしたい」。コボスタ宮城で記者会見に臨んだ田中将大投手。ファンへの感謝を繰り返し口にし、7年間立ち続けたマウンドに向かって深々と一礼、会見場を後にした。
 グラウンドを見下ろす会見場には100人以上の報道陣が詰め掛け、午後3時、縦じまのスーツに身を包んだ田中投手が姿を現すとフラッシュが集中。席に着くと、緊張した面持ちで両拳を膝の上で握り「ヤンキースと基本合意したことをご報告します」と切り出した。
 東日本大震災の被災地へのメッセージを求められると、昨年の日本一を最大の思い出に挙げながら「東北の方々が喜ぶ姿を見て、僕自身喜びが大きくなった」と強調した。「米国に持って行きたい物」を問われ「ももいろクローバーZのDVD」とおどける場面もあった。
◎「日本のスター」歓迎/NY市民
 【ニューヨーク共同】米大リーグ、ヤンキースがプロ野球楽天の田中将大投手の獲得を発表した22日、ニューヨークのファンや在留邦人からは「日本のスター」(米紙ニューヨーク・タイムズ)の入団に歓迎の声が相次いだ。
 マンハッタンのヤンキース公式ショップで両親らと買い物をしていたブライアン・ペレスさん(14)は「同じ日本人のイチロー(外野手)があれだけ活躍している。タナカもきっとチームに貢献してくれると思う」と期待を示した。
 マンハッタンの繁華街タイムズスクエア近くのスポーツバーでバーテンダーを務めるマイク・マグレディさん(55)は「出身地が日本だろうが、メキシコだろうが、良い選手なら獲得あるのみだ」と笑顔で話した。
 在留邦人で弁護士の本間隆浩さん(30)は「イチローや黒田(博樹)投手に続いて日本人選手を間近で観戦できるなんて、とてもうれしい」。職場の米国人の間でも田中投手の話題で持ちきりだといい、「高額契約な分、米国人ファンの目も厳しくなるが、実績を挙げれば楽天時代の活躍も注目されるし(東日本大震災の)被災地のファンも誇りに思うはず」と語った。

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