ユダヤ人に学ぶ、日本人が生き残る方法

 本連載は『人生の大問題を図解する!』(光文社)の内容からポイントだけをピックアップしています。読者の皆さんのライフプランを見直し、後悔しない人生を送るための手助けになればと願っています。
 人生の重大事の中から、「お金」「語学力」「仕事」「家族」「思考力」という5つのテーマで衝撃的かつ客観的なデータをいくつか紹介します。
 第7回は「日本沈没でも生き残る技術」です。
●沈んでいく日本列島を見ながら、ふと思ったこと
 1973年。私が小学校時代に観た映画で、非常に印象に残っているシーンがあります。それは小松左京原作のスペクタクル映画『日本沈没』のラストシーン。草なぎ剛主演でリメイクしたので、映画を知っている人は多いでしょう。しかし、私の脳裏に刻まれているのは、藤岡弘、といしだあゆみが主演した1973年バージョンの方です。
●「日本沈没」(1973年)あらすじ
 地球物理学者である田所博士が、小笠原沖の日本海溝を潜水艇で調査したところ、海底を走る奇妙な亀裂と乱泥流を発見。異変を確信した田所はデータを集め、1つの結論に達します。それは「日本列島は最悪の場合、2年以内に地殻変動で陸地のほとんどが海面下に沈降する」というものでした。
 政府は日本国民と資産を海外へ脱出させる「D計画」を発動。だが、異変のスピードは予想を超えて進行。各地で巨大地震や休火山の再活動が立て続けに起こります。精鋭スタッフたちは死に物狂いで、国民を続々と海外避難。しかし、無情にもその日はやってきます。
 四国を皮切りに次々と列島は海中に没し、最後に北関東が水没。そして、ついに日本列島は完全に消滅したのです……。
 そのラストシーンで、田所博士は日本に残り、火山灰にのまれていきます。田所博士の右腕である潜水艇技師小野寺(藤岡弘)は、海外避難し、砂漠を走る列車に乗っています。一方、その恋人、玲子(いしだあゆみ)は、雪の大地を走る列車から日本の方を見つめている……。そんなシーンで終わるのです。
 私は当時、沈んでいく日本大陸の映像をぼうぜんと見つめながらも、ずっと別のことを考えていました。それは、日本が消滅し、北と南の大地に離れ離れになった2人がもう一度会える日は来るのだろう、というようなロマンティックなことではありません。それよりも気になったのは、もっと現実的な課題でした。
 「この2人は新しい国でちゃんとやっていけるのかな……?」
 「言葉は通じるのかな……?」
 「仕事に就けるのかな……?」
 そして、未踏の地で、彼らがたくましく生きていくことを子供心に祈りました。
●あれから38年後、「日本沈没」は現実に
 2011年3月11日、マグニチュード9.0という巨大地震が東日本を襲い、テレビを付けるとパニック映画さながらの、津波に街が丸ごと飲み込まれていく様子が映し出されていました。帰宅困難者が大勢出て、数十キロを何時間もかけて歩いて帰りました。
 千葉沖ではコンビナートが炎上し、巨大なタンクに大きな穴が開いていました。多くの地域で電力、ガス、水道などのライフラインが止まり、計画停電や極度の節電が必要となりました。
 福島原発では冷却が困難になり、放射能が漏れました。インターネット上では「チェルノブイリになる」「メルトダウン」など毎日のように気分の悪い未来予測のコメントが多数寄せられ、誰もが空気中や水道水に含まれる放射能をチェックしてから外出するようになりました。日本に滞在中の外国人は慌てて母国に戻り、成田空港はパニック状態になりました。
●復興の進まない被災地、放射能の重いつめ跡
 現在、日本は別の意味で「沈没」しつつあります。リーダー不在の政界茶番劇をマスコミが報じる一方で、遅れる震災や原発問題の処理、決定打のない経済政策、国際競争力のさらなる低下、内向きで停滞するムード。たとえ物理的な大陸は残ったにせよ、日本というプラットフォームは長期的には、さまざまな面で沈みかかっています。
このままでは、私たちの将来が明るくないことは、あらゆるデータが指し示しています。
●国がなくても、たくましく生き残る人々?
 「日本を出よう」なんていうと売国奴呼ばわりする人もいるかもしれません。しかし、国がなくてもたくましく生きてきた民族は少なくないのです。例えば、ユダヤ人は、1948年のイスラエル建国まで2000年近くもの間、自分の国というものがなかった。それでも、ユダヤ人というアイデンティティーは強く、それぞれの国に適応してその能力をいかんなく発揮してきました。
 ハリウッド俳優やミュージシャンであれば、ウィノナ・ライダー、レニー・クラビッツ、ボブ・ディラン、ウディ・アレン、ハリソン・フォード、マイケル・ダグラス……。それにユニバーサル、パラマウントといった映画スタジオの創業者たち。
 事業家ではデルのマイケル・デル、オラクルの創業者ラリー・エリソン、マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO、インテルの創業者アンディ・グローブ、ラルフ・ローレン、リーバイ・ストラウス、ダナ・キャラン、エスティ・ローダー、チャールズ・レブロン。
 投資家では、ジョージ・ソロス、SGウォーバーグ銀行の創業者ウォーバーグ卿、金融ニュースのブルームバーグ。学者であれば、アインシュタイン、ジークムント・フロイト、コンピュータの生みの親フォン・ノイマン、インターネットの発明者。実に多くのユダヤ系民族が世界で活躍しています。
 ノーベル経済学賞に至っては、過去の受賞者のうち実に40%がユダヤ人です。世界人口のほんの0.02%しかいない民族がノーベル賞の4割を占めるなんて、同じ人間なのか、と疑問をもってしまうかもしれませんね。
 しかし、ユダヤ人が特別な能力を持っているわけではありません。ただ、彼らは国というプラットフォームを持たなかった。国に頼ることができなかったから、自衛のために、自分の能力を磨き、住んでいる国でのプレゼンス(存在感)を高めてきた。生き残るために、自分自身の価値を高めることに尽力してきた。だったら日本人も、そうあるべきだと思います。
●本当に安定を求めるのであれば、それはあなたの「中」に
 私が『人生の大問題を図解する!』で伝えたいのは、日本が沈没するかどうかではないのです。日本がどうなろうが、世界がどうなろうが、たくましく生きていける日本人になるべきだ、ということです。
 あなたが本当に安定した生活がしたいのであれば、それは国や企業に求めるのではなく、あなたの中に求めるべきだ。そう、思います。
 政策や景気に文句を言っても始まりません。しかし、自分自身が、どのような環境でも生きていける自信を身に付けていれば、今の日本をとりまく「どよん」とした空気が一掃されるのではないかと思っています。私は、そのための「小さな変化」をあなた自身の中に起こすことを目的に筆をとりました。いわば「生き残る技術」です。
●日本人のための「生き残る技術」
 生き残るなんていう扇情的な印象を持つ人もいるかもしれませんね。しかし拙著で伝えたかったのは、日本が危ないから逃げ出そうとか、日本政府に不満をぶつけるようなことではないのです。日本というプラットフォームに対して、自立した自分を創り出すことが目標です。
 プラットフォームとは、社会やある仕組みを動かすための基盤となるものです。ですから、日本というプラットフォームに過度に依存した状態では、プラットフォームの浮沈に自身の人生まで左右されてしまいます。いったんプラットフォームに従属してしまうと、プラットフォームの横暴にも従わざるをえません。
 だから、プラットフォームからなるべく独立する、あるいはプラットフォームが変わっても落ち着いて自分の人生を歩んでいける指針と計画性が必要です。そのための、はじめの一歩を踏み出しませんか?
 逆境の中でも前向きに、不屈の精神で復興に取り組む姿、そして震災の中で光る日本人の秩序、道徳、譲歩の精神は、海外メディアでも大絶賛していました。私自身も、日本人は忍耐強さやまじめさ、高い技術力は諸外国と比べても比類ない強さを持っていると思います。そんな素晴らしい日本人だからこそ、どんな世界になろうとも生き延びなければいけない、そう思います。
 日本人の生き残り計画は、私たち自身が各自で計画し、実行しなければなりません。そのための残り時間は極めて少ないのです。
 さあ、そのスイッチを今すぐ押してください。
[永田豊志,Business Media 誠]

タイトルとURLをコピーしました