ユニクロ・しまむらに黄信号!2強を駆逐する「ワークマン」強さの秘密

「ユニクロ」や「しまむら」といったカジュアル衣料専門店の先行きに黄信号が点灯し始めている。2社ともに、デフレが生んだ衣料品販売の優等生として成長、カジュアル衣料専門店の1~2位になっている。しかし、最近、国内ユニクロは成長を牽引してきた価格が「安くない」といわれ、商品も「代わり映えしない」という指摘も出ている。しまむらも過度な商品の絞り込みと、高価格への誘導が裏目に出ている。一時代を築いたデフレの優等生、2強体制の終わりの始まりか――。(流通ジャーナリスト 森山真二)

● しまむらの凋落が甚だしい ビジネスモデルの転換が裏目に出た

 しまむらの凋落(ちょうらく)が甚だしい。3月11日には2019年2月期の連結業績予想を下方修正した。

 売上高の従来予想は5700億円だったが、修正では約240億円下回った5460億円、本業のもうけを示す営業利益は前期比40%減の245億円と期初予想を140億円下回った。既存店の売上高も落ち込みが激しく、前期比約7%減だった。

 会社発表の業績修正の理由は一言でいうと、「暖冬で冬物が売れず、売り場改革も不発に終わった」というもの。確かに、衣料品の場合は天候に左右されることはある。しかし、業界ではそうした「短期の天候要因だけが理由だけではない」という声が少なくない。

 最大の原因はしまむらが2016年から2017年にかけて実施した商品数の絞り込みだ。最大約3割にも及ぶ大胆な絞り込みを実施したことだろう。

 いわば売れ筋商品への絞り込みで在庫負担を減らし売り場効率を引き上げて高価格帯商品を拡充するという、まさに従来のビジネスモデルからの転換を図ったのだ。

 しまむらは本来、ユニクロと違って数ある商品の中から「目新しい商品」を発掘するのが1つの「売り物」となって、それが「集客力」となってきた。

 しまむらはプライベートブランド(PB)も販売しているが、ユニクロのようなSPA(製造小売業)型ではなく、そのため仕入れ商品が多くを占める。そのバラエティ性が支持されてきた。

● しまむらが持つ 「強み」が失われた

 「しまパト」と呼ぶ、しまむら“公認”のファンがインスタグラムなどSNS(交流サイト)で商品画像とともに「しまむらでこんな商品を見つけました」「自宅の近くのしまむらでこんな商品を買っちゃった」などと投稿、その情報がしまむらのサイトに掲載されたり拡散されたりして顧客が顧客を呼ぶ形で支持を高めてきた。

 しかし、商品の過度の絞り込みで商品を発掘すること、購買の新鮮味が薄れたといわれる。整然としているようで新たな商品の発見がある。そんな商品政策、エンターテインメント性が希薄化した。

 しまむらでは現在この品目数の絞り込みの修復作業を進めているというが客数の落ち込みは顕著で2019年2月期の客数も前期比2.1%減。商品数削減の弊害が相当深刻だったことを示している。

 もう1つ、価格政策だ。しまむらの価格帯は、ユニクロよりも安く、それでいてチープではなく、品質もまずまずだったところが受けてきた。

 しかし、こちらも価格帯を上方に移行した結果、値頃感が失われ、相対的にネットの低価格カジュアル衣料サイトなどに比べ優位性が失われている。

 しかも、しまむらは本来、二等地戦略で地方都市の生活道路の面した場所に出店してきた。発注など中央集権的で、パートやアルバイトで十分に賄えてきた店舗運営も低コストでできた。

 しかし大都市に積極的に出店した結果、販管費比率も上昇(2018年2月期は2017年2月期に比べ1ポイント以上上昇)、これを補完するための品ぞろえの絞り込みなど売り場効率化を急いだことが現在の苦境を招いた一因とも指摘されている。

衣料品通販サイト「ゾゾタウン」への出店など、EC(電子商取引)も展開し、巻き返しを狙う戦略を打ち出したが、アパレルメーカーやSPA型企業と違い、しまむらは仕入れ方式のため、出店料がECの足を引っ張る。戦略が裏目、裏目に出ている形だ。

 カジュアル衣料業界の専門家は、しまむらの場合は「しまパトのような店舗とウェブを融合した戦略、へたにECサイトに出店するのではなくウェブルーミングを徹底するべきではないか」と指摘する。

● ワークマンプラスに 食われているユニクロ

 ユニクロの場合はしまむらのように、客離れを起こしているという兆候はない。

 しかし、2019年8月期の上期(18年9月~19年2月)の既存店売上高は前年同期比0.8%の前年割れだった。テレビなどにあれだけ大量の広告宣伝を投入しても既存店は水面上には出なかった。しかも好採算の重衣料が売れる上期の落ち込みは響く。

 国内ユニクロの売上高は2018年8月期で前期比6.8%増の8647億円。これだけの規模になっても7%近く伸びているのだから立派という声もあるし、国内の売上高で8000億円以上あるのだから、既存店が多少、マイナスになるのは仕方ないでしょうという意見もある。しかし既存店はもはや、成長期から停滞期に入ったといえるのは確かだろう。

 この停滞を促している要因は種々あるが、最近の特徴的な例としていわれているのが、「ワークマンプラス」の台頭だ。ワークマンプラスは、従来のワークマンで扱っていたアウトドアウエアなど商品に変わりはない。

 だが、ショッピングセンターに出店し、一般消費者にも買いやすいように商品政策を再構築した結果、マスコミにも取り上げられ、一般消費者の来店が増加、かつてのガテン系の現業職中心の顧客から一般消費者を取り込んで、まさにワークマンプラスブームを巻き起こしているのだ。

 ワークマンプラスは19年3月末で12店になる見込み。しかし1年後の20年3月までに計68店とする計画である。

 ユニクロの店舗数は800店近くあるのだから、まだまだ競争相手にならない。

 しかし、国内ではワークマンプラスがアウトドアウエアで、ユニクロよりも大きく下をくぐる価格を設定しており、ユニクロの同じような商品の価格は相対的に魅力が薄れたようにみえる。

 いわばユニクロはワークマンという“カテゴリーキラー(特定の商品分野を豊富に品ぞろえして安値販売するチェーン店舗)”に重衣料(ジャケットやコートなどの衣類)など稼げるカテゴリーを食われているといってもいい。

● ユニクロの商品は 「革新性」を失いつつある

 ユニクロはフリースやヒートテックなど機能性のある商品を生み出し「革新性」があった。しかし、そうした革新的な商品も最近なくなっており、ワークマンプラス現象は、この革新性を失ったユニクロ商品の間隙(かんげき)を突いた格好だ。

 ユニクロは海外ではとくに東南アジアを中心にまだまだ成長の余地があるだろう。しかし、国内では低成長に転じており、今後はこの踊り場を経て再成長できるかどうかの正念場でもある。

 ユニクロ、しまむらといい、カジュアル衣料品業界に新たな息吹を吹き込んできた両雄は衰退の一途をたどるのか。それとも再び輝きを取り戻せるか。

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