岸田文雄外相は14日午前の記者会見で、日本が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に対する今年の分担金を支払っていないことを明らかにした。理由について「総合的な判断だ」と述べるにとどめた。しかし、中国が昨年、記憶遺産に申請した「南京大虐殺文書」が一方的に登録された件に抗議する狙いがあるとみられる。また、日中韓などの民間団体が申請中の慰安婦問題関連資料の登録を牽制(けんせい)したい考えもあるようだ。
日本の今年のユネスコ分担金は約38億5千万円。例年、日本は当初予算成立後の4〜5月に支払ってきており、10月まで留保するのは異例といえる。岸田氏は今後の方針に関し「総合的に判断していきたい」と語った。政府・与党内には「記憶遺産への登録手続きの透明性が確保されていない」との批判が根強く、ユネスコに対し制度改善を求めている。