ランドセル“復権” 「6年生まで」8割超す

 「タイガーマスク」現象で児童養護施設などに届けられたランドセル。小学校高学年になると体に合わなくなったり、おしゃれ感覚から背負わなくなりがちだが、最近は卒業まで使う児童が増えている。仲間意識の強まりとともに、ランドセルは“カッコ悪い物”ではなくなっているようだ。(織田淳嗣)
 ◆機能的で多彩
 ランドセル向け人工皮革を製造しているクラレ(東京都千代田区)は毎年、ランドセル購入者の新1年生の男女計400人の親を対象にアンケートを実施している。
 それによると、「近所の子供が何年生までランドセルを使用しているか」との問いで、「6年生まで」の回答は平成15年は59・4%で、その後年々増加。昨年は78・5%に達し、今年は8割を超える。
 兵庫県姫路市や愛媛県松山市のある市立小学校では「以前からほぼ100%」。横浜市立北方小学校(中区)で「約5割」、同市立東品濃(しなの)小学校(戸塚区)では「6、7割」という。
 聖学院大学(埼玉県上尾市)の東島誠教授(歴史学、政治思想史)は「ランドセルを“卒業”したり、逆に6年生まで“完走”したりすることで、自立心を表現することができたのは過去の話。機能的で軽量、色やデザインの選択肢も多い昨今、ランドセルを使い続けることにそもそも疑問を持たない」と分析する。
 ◆みんなと一緒
 子供たちの「横並び意識」を指摘する声もある。
 ベネッセ教育研究開発センター(東京都新宿区)が21年に行った「子ども生活実態基本調査」によると、「仲間はずれにされないように話を合わせる」小学4~6年生は、16年の46・7%から21年は51・6%に増加。「グループの仲間同士で固まっていたい」児童も46・2%から52・5%に上昇している。
 調査メンバーの邵勤風(しょう・きんふう)研究員は「今の高学年の子供たちは仲間はずれを避け、友達と同じことをやる傾向がある。不況下で最後まで使わせようとする親の言うことを聞いていることもあるのではないか」とみる。
 東島教授も「みんなと一緒であることの安心感が、無意識のうちに『いじめ社会』を生き抜く知恵となっているのではないか」と付け加えた。
 今期のランドセルは、これまで入りにくかったA4サイズのファイル(幅22センチ)に対応して内寸幅を広げたものが台頭し、各小売店で売り上げを伸ばした。高機能化が進み、ランドセルと一緒に卒業する児童は増えそうだ。

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