いまや“日本の国民食”とも言われるラーメン。新店舗が入れ替わり立ち替わり続々とオープンしていくなか、目に入るのが店名の「中華そば」という文字。「中華そばといえばラーメンのことでしょ」と、なんとなくで認識をしていたのですがラーメンと中華そばに何らかの違いはあるのでしょうか?
気になった筆者は、ラーメンのフードミューズメントパーク『新横浜ラーメン博物館』の中野さんに話を聞いてみました。
ラーメンと中華そばの違いについて、中野さんいわく「ズバリ“同じ”です。明確な区別はありません」とのこと。同じものが違う名称になる理由については「地域差」と回答しています。
「昭和初期は“南京そば”と呼ばれていました。明治中期になると“支那そば”や“老麺(らおめん)”などと呼ばれるように。さらに戦後には、支那そばという言葉が避けられ、同じく“中国の麺料理”を意味する“中華そば”へと変化していった経緯があります」と、ラーメンは中国の麺料理が変化していったものだと中野さんは言います。
ラーメンという言葉が定着したのは日清の「チキンラーメン」が販売された昭和33年以降だそう。これをきっかけにラーメンの存在が広がっていったこともあり、チキンラーメン登場以前にラーメンが定着した地域では「中華そば」、登場以後に定着した地域では「ラーメン」と呼ばれるなど違いが出てきたとのこと。「今はラーメンという呼び方が定番ではあるものの、地域によっては依然中華そばとして親しまれる場合もありますね」と中野さん。
例えば和歌山県ではラーメン店が増えていったのが昭和20年後半から30年代であり、その当時は“中華そば”と呼ばれていたといいます。呼び方の違いは、ラーメンが普及した「時代と地域」に関係することが分かりました。
では新規にオープンするラーメン店において「中華そば」を謳う店はどのような傾向にあるのでしょうか。中野さんは「一例として“中華そば”と呼ばれる地域で昔からラーメンを食べていた・影響を受けていた、という店主の場合は自身の店でも中華そばとして販売するケースがあります」と解説。いずれにしてもラーメンと中華そばとラーメンのあいだに“特徴の違い”は全く無いようで、「一般的に中華そばといえば『醤油ラーメン』『ちぢれ麺』『煮干し出汁』などイメージを持つ方もいるでしょうが、これについても地域差がある」とのこと。
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「ラーメン」を名乗るか「中華そば」を名乗るかは店の自由。どちらにせよ、新旧各店がおいしさを追求し日々しのぎを削っていることに変わりはありません。(取材・文=宮田智也 / 放送作家)