年功序列が崩壊したといわれるが、いまだに年齢階層別平均賃金では50代がピーク。しかし、リストラ、転職失敗、介護など、一度道を踏み外せば、いとも簡単に年収300万円以下へと転落する。バブル期に入社し、「恵まれていたクセに」と同情もされない悲しい世代の横顔は、明日の我が身だ。今まで語られることのなかったそんな転落50代のリアルから、社会人後半戦の教訓を学び取る。
◆忍び寄るリストラ・クライシス最前線
転落50代の最大の要因はリストラだとジャーナリストの藤田和恵氏が指摘する。一時期ほどの苛烈さは鳴りを潜めたが、11月8日、東芝グループが5年で7000人を削減する案を発表、NECも今年7月に3000人の希望退職実施に踏み切るなど、いつ自分の会社で大号令が鳴り響いてもおかしくないのが現状だ。
東京管理職ユニオンの鈴木剛氏は「リストラしやすいタイプ」について、こう語る。
「日本の労働法では、基本的に正社員の首はそう簡単には切れないようになっています。ですから、『追い出し部屋』のように自発的に退職するように仕向ける。裏を返せば、追い込みやすい人がターゲットにされるわけです」
その下準備として、コンピテンシー評価と呼ばれる尺度が導入されているのだという。
「コンピテンシー評価とは、端的に言えば『できるビジネスマンの行動様式』という曖昧なもの。ですから、どんな人にも言いがかりをつけられる。となれば、ターゲットは真面目でコツコツ仕事をする草食系タイプになります。要は、仕事ぶりが真面目かどうかではなく、言いがかりをつけて追い込めるかどうかが重要なのです」
この口実を与えるという点では、PC私用閲覧や経費のごまかしなどを40~50代でも続けるお調子者は格好のターゲット。そして、NECの事例のようにリストラリスクは企業の大小にかかわらず訪れる。
「むしろ大企業ほど業務が細分化されているので、ニッチな職能しか持っていない人も多く、その分野が衰退・代替した瞬間にリストラ候補となります。同様に、部下のマネジメント経験が少ない人材も危険でしょう」(人材育成コンサルティング企業を営む前川孝雄氏)
◆リストラターゲットになる人物像
・真面目でコツコツ仕事をする草食系
・経費のちょろまかしなどグレー行為を40代以降も続ける
・成果主義の外資系金融、IT、製薬会社などの社員(社内で「必ず毎年5%はリストラする」など規定が存在)
あなたの肩が叩かれる日は、明日かもしれない……。
【鈴木剛】東京管理職ユニオン執行委員長
テレビ報道番組の制作会社、日本労働者協同組合連合会センター事業団などを経て現職。著書に『中高年正社員が危ない』(小学館)など
― 転落する50代の共通点 ―