リフォームに「耐震性」の潮流 住宅エコポ追い風、大手も本格参入

大手住宅メーカーが相次いでリフォーム事業を強化している。独自の料金値引き制度の設置や、営業拠点・担当者を拡充の動きが加速している。7月に終了した住宅エコポイント制度が復活する方針となったほか、東日本大震災で耐震性への関心が高まっていることも事業強化に拍車をかけている。新築着工件数の増加が見込めない中で新たな収益源としたい考えだが、大手の本格参入によって中小業者との連携も進みそうだ。
 「住宅エコポイントにより、『リフォームは必要』という常識ができた」。大和ハウス工業傘下のリフォーム会社、ダイワハウス・リニューの臼谷紀久雄取締役は、政府のエコポイント制度をこう評価。3年前のリーマン・ショック以降、財布のヒモを締めていた消費者が、断熱性向上などのリフォームに目を向け始めたことに手応えを感じている。
 これに対応、親会社の大和ハウスは、営業、設計工事などのリフォーム関連社員を2014年3月期までに現在の2倍強の1660人に増やす。戸建て住宅の床下を点検するロボットなどを活用し、改装の提案を積極化する。
 大和ハウスだけではない。積水ハウスは断熱性の高い窓の取り換えを含む改装工事について料金を最大20万円割り引く制度を8月から導入した。住友林業も、リフォームの営業拠点を今年度中に4カ所増やして計65カ所とするほか、営業担当者も首都圏を中心に年間100人前後採用する。
 ■中小、生き残りへ大手との連携カギ
 2008年度に約7兆5500億円だったリフォーム市場は、住宅エコポイントなど国の需要刺激策もあって徐々に回復。調査会社の富士経済によると、14年度の市場規模は10年度比7.7%増の8兆600億円、耐震リフォームも3.0%増の4100億円と予測する。
 戸建て住宅だけでなく、マンションの室内リフォームへの事業拡大も広がる。ミサワホームは14年3月期のグループのリフォーム関連売上高を今期比約3割増の700億円とする計画で、マンションリフォームへの進出を視野に入れる。
 リフォーム市場は国の政策支援も追い風だ。国土交通省は20年までに中古住宅の流通・リフォーム市場を現在の倍増となる20兆円にする目標を掲げており、11年度第3次補正予算で住宅エコポイント制度を復活させる計画で、「リフォーム市場がにわかに活気づいてきた」(業界関係者)と期待する。
 リフォームでは、震災に伴い耐震性能向上も注目され始めた。住友林業の4~8月のリフォーム受注額は、宮城県で前年同期比3倍以上、福島県で2倍以上となり、耐震工事へのニーズも高かった。住友林業ホームテックの高桐邦彦執行役員社長は「断熱性だけでなく、耐震性も重視したい」と述べる。業界関係者は「耐震工事に補助金を出す地方自治体が増え、全国的にニーズが増えるのは確実」としており、耐震補強が市場を牽引(けんいん)する可能性が出てきた。
 耐震性能への関心の高まりは、裏を返せば住宅への不安が高まっていることでもある。そこで大和ハウスは戸建て住宅の耐震診断・点検に力を入れ「安心のサービスをしっかり打ち出す」(ダイワハウス・リニューの臼谷氏)ことで、新規需要の取り込みを図る。ミサワホームも地震の震動を吸収する自社開発のゴムを使った制震装置「MGEO(エムジオ)」のリフォーム仕様の受注増を狙う。
 大手住宅各社のリフォームの照準は、自社が建築した物件にとどまらず、地域の工務店が建設した住宅にまで広がる。ただ、大手がリフォームを受注しても、「実際に施工するのは地元の工務店など」(業界関係者)となる。このため、中小のリフォーム業者にとって、いかに大手と組んで工事を確保できるかが生き残りの道となりそうだ。(鈴木正行)

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