レトロな「うどん自販機」修理、復活 全国から支援金、ファンも急増

兵庫県内でも希少な存在で知られる香美町のうどん自動販売機が今秋、冷蔵装置の故障で稼働停止に陥ったが、全国から寄せられた修理費を基にこのほど復活した。レトロな外観と、40年以上休まず提供し続けた味で人気だが、メーカーは生産を停止し、寿命は老朽化との闘い。復活後は訪れる人が増えており、オーナー藤村学さん(54)は「急な客の増加に供給が追い付かない」とうれしい悲鳴を上げている。(金海隆至)

 うどん自販機は、大手電気機器メーカー「富士電機」(東京)が1975〜95年に約3千台製造。同町村岡区長板で食料品店「藤村商店」を経営する藤村さんの父親が76年、近くの国道9号沿いに「コインスナックふじ」をオープンした際に設置した。ほかにジュースやたばこ、パンなどの自販機が屋内外に12台並び、住民やドライバーらに親しまれている。

 うどん自販機は、300円を入れると、関西風だしのきつねうどんが30秒を待たずに出来上がる。生産を停止したメーカーは部品供給や故障対応を行わず、現在の稼働台数は不明だが、同店へは近隣府県だけでなく北海道などからもファンが訪れていた。

 今年5月以降、麺を冷やす内蔵装置が不調となり、9月中旬から稼働を停止。修理費用(65万円)の工面に悩んだ藤村さんは、おいの勇太さん(32)とクラウドファンディングで資金を募ると、2週間もたたずに約75万円が集まった。全国から「ぜひ直して」などと多くの声が寄せられたという。

 装置を交換し、10月20日に販売を再開した。藤村さんは毎朝、約20杯分の麺をセットするが、復活後の売り上げは1日平均約30〜40杯と増加。天候が良く、写真を撮りに訪れるファンやバイク客などが多い時は50杯に上る日もあるという。

 地元の常連という男性(66)=同町=は「コンビニで売っているインスタントのうどんとは味が違う。何とも言えんが、心温まる。この場所が落ち着くし、自販機がなくなったら寂しい」としみじみ語る。

 日中は麺の補充に忙しい藤村さんは「やめることも考えたが、うれしい。お客が来すぎて、また自販機がつぶれちゃうと困るけど」と顔をほころばせている。

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