ビタミンCが豊富なレモン。近年の研究では、高血圧や肥満、骨粗鬆(こつそしょう)症の改善にも役立つ可能性があることが分かり、美容効果にとどまらず、生活習慣病を予防する健康食材としても注目が高まっている。(玉崎栄次)
疲労感を解消
ビタミンCの抗酸化作用は、美容効果が期待されるほか、風邪の予防にも役立つことで有名だ。レモンにはこのビタミンCが、果実1個(100グラム)当たり約100ミリグラム含まれており、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(平成27年版)で示された成人の1日の推奨摂取量に相当する。
また、レモンは疲労感の解消にも効果的。香りは、リラックス効果を期待できる「リモネン」と呼ばれる匂い成分を含んでいる。
高血圧や肥満を抑制
「近年の研究ではさらに、血圧の上昇や肥満の改善に対する効果も期待されています」
県立広島大・レモン健康科学プロジェクト研究センターのセンター長を務める飯田忠行教授(応用健康科学)はこう指摘する。
同大のチームによる研究では、レモンの1日平均摂取量が0・3個(レモン果汁約10ミリリットル)未満の人より、0・7個(同約20ミリリットル)以上の人の方が最高血圧が低くなった。この結果について、飯田教授は「加齢に伴う血圧の上昇を抑える可能性があると考えられる」と説明する。
さらに肥満予防も期待できる。肥満になると脂肪細胞から食欲抑制ホルモン「レプチン」が多量に分泌され、体にレプチン抵抗性がついてしまう。抑制がきかなくなり食べ過ぎてしまうが、レモンを多くとっている人は、あまりとらない人よりもレプチンの血中濃度の上昇が抑制される傾向が報告されているという。
飯田教授は「レモンは生活習慣病などの発症を防ぐため、日常生活に取り入れやすい理想的な食材の一つ」と話した。
骨粗鬆症対策にも
骨粗鬆症予防では、レモンに豊富に含まれる「クエン酸」が注目される。
骨づくりに大切な栄養素であるカルシウムは人体に吸収されにくく、食物から摂取しても約70%は体外に排出されてしまう。特に高齢になると、腸から吸収されるカルシウムの量は低下する傾向にある。すると、体は骨に蓄えられているカルシウムを使って補おうとし、結果、骨粗鬆症になりやすくなる。
クエン酸には、カルシウムを水に溶けやすくする「キレート作用」と呼ばれる働きがある。このため、カルシウムの吸収を助け、骨の強さを示す骨密度を上げる効果が期待されているのだ。
レモン飲料事業を手がける飲料メーカー「ポッカサッポロフード&ビバレッジ」が県立広島大などと行った共同研究(28年)で、中高年女性44人に30ミリリットルのレモン果汁を含む飲料(1本200ミリリットル、カルシウム350ミリグラム入り)を半年間毎日飲んでもらったところ、骨密度は3カ月後に平均1・3%上がり、半年後もほぼそのまま保たれていることが分かった。
同社の親会社、サッポロホールディングスの価値創造フロンティア研究所でレモンの健康効果を研究する平光正典主任研究員(食品機能科学)は「骨密度は20〜30代をピークに低下していく。若いころから習慣的にカルシウムを摂取することで、ピーク時の骨密度が高まり、骨粗鬆症の予防につながる」と説明する。
レモンを料理に活用することで、家庭でも手軽に効果的なカルシウム摂取が可能になる。
例えば、牛乳にレモン果汁を入れたラッシーや、カルシウムが豊富なアジの南蛮漬けで酢の代わりにレモン果汁を使うなど、おやつや食事に取り入れるのも一つの手だ。