政府がロシアから日本への渡航者に対し、旅券の事前登録制によるビザ(査証)の取得免除を導入する方向で検討を始めたことが14日、分かった。ロシア側が求めるビザ撤廃に実質的に応じることで、日露平和条約締結交渉に弾みをつけたい思惑もある。政府関係者が明らかにした。
今後、不法就労や治安面の問題から法務省や警察庁など関係省庁間の調整が必要で、実施時期は未定という。河野太郎外相は16日、ドイツ・ミュンヘンで行うロシアのラブロフ外相との会談で、ビザ撤廃の検討状況も伝えるとみられる。
旅券の事前登録は、あらかじめ日本の在外公館でパスポート情報を登録すれば、90日以内の短期滞在ビザの取得を免除する制度。有効期間内で一定の滞在期間を超えなければ、何度でも日本に入国できる。同様の対応は、アラブ首長国連邦(UAE)とインドネシアからの渡航者に適用している。
政府はロシア側の求めに応じ、平成29年1月と昨年10月に段階的にビザ取得手続きを簡素化してきた。この結果、年間の訪日ロシア人は28年の約5万4800人から29年に約7万7300人(前年比41%増)、30年には約9万4800人(同23%増)と大幅に増えた。政府関係者は「手続き緩和の効果が確実に表れている」と分析している。
ロシア政府は一層の緩和を求めており、河野氏と森健良(たけお)外務審議官は1月、それぞれラブロフ氏、モルグロフ外務次官と会談した際にビザ撤廃を求められていた。
日本は現在、193の国連加盟国のほとんどの国からビザ免除措置を受けている。一方、日本が観光や商用での短期滞在者にビザを免除しているのは68の国・地域にとどまり、ロシアは入っていない。
相手国の経済状況や治安面などからビザの発給要件を慎重に判断してきたためで、ロシア国民へのビザ免除をめぐっても、関係省庁間の協議が長期化する可能性もある。