ロシア産原油の輸送、無保険の「闇タンカー」船団が大半を担う…500隻に上ると英紙報道

【ヨハネスブルク=笹子美奈子】ロシアがウクライナ侵略に伴う米欧の対露制裁を回避して原油を高値で輸出するため、船舶保険をかけずに原油を輸送する「闇タンカー」と呼ばれる船団を多用しているとの指摘が相次いでいる。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は24日、8月に輸送されたロシア産原油の約4分の3は無保険の船舶が使われたとの分析結果を報じた。

 先進7か国(G7)は昨年12月、上限価格(1バレル=60ドル)を超える原油の取引に、船舶保険を引き受けないよう保険会社に義務づけた。原油流出などの事故をカバーする船舶保険は米欧日の企業に集中している。制裁が完全に機能すれば、ロシアは60ドル超での原油輸出が困難となり、戦費調達に打撃となるはずだった。

 ただ、ロシアは国際市場価格に近い値での取引を可能にするため、制裁の発動前から闇タンカーの船団を用意していた。英紙ガーディアンによると、船舶数は老朽化した船舶を中心に約500隻に上るという。

 露産原油の代表的な指標となるウラル原油は、7月にG7が上限に設定した60ドルを突破し、最近は80ドル付近で取引されている。FTはロシアの今年の原油輸出収入は前年より150億ドル(約2兆2300億円)増加するとの推計を報じた。

 一方、ロシアに協力的な国もあるようだ。アフリカ中部ガボンは船籍登録の規則を緩和した。ガボン籍の船は倍増し、積載量1万トン超の船の98%が闇タンカーとしてロシアの原油輸送に関わっているとの情報がある。ガボンは国連安全保障理事会の非常任理事国を務めている。

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