ローカル番組見られず 東北の地デジ難視地区の6割

 地上デジタル放送への移行をめぐり、東北の一部地域で「災害情報が入手しにくくなる」といった声が上がっている。7月24日の完全移行までに受信対策が間に合わない地域向けの衛星放送は東京キー局の番組で、ローカル放送が見られないためだ。ニュース、天気予報に加え、交通情報などのテロップも首都圏向けが流される。自治体関係者は「衆院選などの政見放送も地元候補の主張が聞けなくなる」と対応に頭を痛めている。
 東北総合通信局によると、通常のアンテナだけでは地デジ放送を受信できない「難視地区」(昨年12月末時点)は東北6県で計4万3040世帯。このうち共同受信施設の設置などの対策が間に合わず、暫定的に衛星放送で対応するのは147市町村の計2万5110世帯に上る。
 衛星対応は昨年3月から全国の一部地域で始まっている。通信局は「4月ごろには東北の対象のうち約2万世帯が見られるようになる」と説明する。
 東北では福島県鮫川村が昨秋から、先行してスタートした。「不便だという話が聞こえてくる」と村の担当者。アナログ放送終了後について「(地元放送局の)災害情報が流れないことを心配している」と明かす。
 大崎市の担当者も「地域説明会では怒られっぱなし。災害報道のほか『息子が出場する高校野球の県大会が見られなくなる』と訴える住民もいる」と語る。
 岩手県地域振興室も「実際の災害発生時に『情報がなかった』となるのが怖い」と懸念。宮城県情報政策課は「地デジ化はあくまで国策。(難視解消の)早急な恒久対策を国にやってもらうしかない」と強調する。
 現段階で対象世帯が最も多い福島県は「対応策を検討してほしい」と市町村に投げ掛けている。「防災無線やインターネット対応が想定されるが、高齢者も多いため決め手に欠ける」と県情報政策課。政見放送への対応も課題で「災害情報の提供を含め、テレビに頼らない広報の在り方が問われている」と言う。
 総務省は「天気予報は衛星のデータ放送で見ることができる。非常に不便をかけるのは事実で、衛星対応の期間が短くなるように対策を急ぎたい」と話している。
[難視対策の衛星放送] 地上デジタル放送を受信できない地域向けの2015年3月までの暫定的な対応策。NHKと民放の東京キー局の地デジ放送を衛星放送として流す。利用できるチャンネル数が限られるため、ローカル放送は流さない。対象世帯にはBSアンテナを無料設置し、チューナーを貸し出す。対象地域以外はスクランブルを解除しないため受信できない。

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