ローソンが2023年4月に発売したプライベートブランド(PB)の大盛りカップ麺が、生活防衛意識の高まりを背景に売れている。「麺大盛り 豚コクしょうゆラーメン」と「麺大盛り 辛みそラーメン」(ともに198円)のシリーズ累計販売数は640万個を突破(2024年4月中旬時点)。直近3カ月の販売数量を見ると、日清「カップヌードル」などのナショナルブランド(NB)を含めたカップ麺カテゴリーで、辛みそラーメンが1位となった。 【画像】全部で4種ある大盛りシリーズ、カップ麺の中身、買い合わせでつくる419円定食の正体(計11枚) 2024年4月には勢いに乗って「麺大盛り 天かすうどん 七味付き」と「麺大盛り 辛コク濃厚 カレーうどん」(ともに198円)を相次ぎ発売。同シリーズを計4種類としている。 支持されている背景について、開発を担当した同社の妹尾翔氏(商品本部 飲料・加工食品部)に聞いた。 麺大盛りシリーズは、価格を抑えながら全体のボリュームを増やしているのが大きな特徴だ。商品によって違いはあるが、麺の量を大手メーカーが手掛けるレギュラーサイズ商品の1.3倍以上としている。 2024年4月に発売したうどんは、コシのある麺を選定。噛(か)み応えのある商品のほうが、満足度が高いだろうという判断からだ。
おにぎりとの買い合わせを意識
価格を抑えるため、商品設計ではメリハリを意識した。同社が消費者に実施したアンケートや、メーカーから寄せられた情報を総合すると、消費者は特に麺とスープを重視していることが分かった。一方、具はそこまで重視していないという結果に。そこで、しょうゆラーメンの具はネギだけにしている。 特にこだわって開発したのがスープだ。おにぎりの買い合わせを想定した濃い味わいに設定。また、量がたくさんあるため、食べている途中に消費者が飽きないよう、最初に刺激的な味(食欲をそそるようなパンチのある味)が来て、コクや深みが後から感じられるようにした。 開発の背景について妹尾氏は「『安くお腹いっぱいになりたい』をお客さまが求めており、PBのラインアップにそうした商品がなかったため」と説明する。ローソンでは容器が縦長タイプのPBカップ麺を取り扱ってきたが、売り場のスペースをとる横幅の大きい容器に入った大盛り系商品はなかった。 大盛り系のカップ麺としては、エースコックの「スーパーカップ」シリーズなどが有名だ。コンビニは売り場面積が限られるので、サイズの大きい商品は販売効率が良くない。また、大盛り系のカップ麺は量販店などで安く売られているイメージが強い。そうしたことから、メーカーやローソンには「コンビニPBで、大盛りのカップ麺はヒットしにくい」という考えがあったという。 原材料の価格高騰などを受け、2022年ころから即席麺の価格改定が相次いだ際、比較的安価なローソンのPBカップ麺の売り上げが伸びた。また、市場全体を見渡すと「大盛り」をうたう商品が好調だった。こうしたことも開発の背景にある。
コンビニPBならではの工夫
一般的に、NBのカップ麺はコンビニだけでなく、スーパーやドラッグストアなどさまざまなチャネルで販売される。そのため、商品単体での満足度が重要になる。おにぎりとの相性を意識した味付けは、コンビニPBならではの工夫といえるだろう。 あえてスペースをとる大型の容器にしたのもヒットの要因と考えられる。平日の昼間、空腹の状態でコンビニを訪れた利用客は、それほど時間的余裕がない。あくまで仮説だが、視覚的に大盛り商品だと分かる商品はそうした状況で手に取られやすいのではと妹尾氏は分析する。 妹尾氏の狙い通り、麺大盛りシリーズはおにぎりと一緒に購入されることが多い。数あるおにぎりの中でも、味がシンプルな「金しゃりおにぎり 塩にぎり」(113円)が特に選ばれている。目立つのは、198円の麺大盛りシリーズ、113円の塩にぎり、108円のペットボトルのお茶(PB)の組み合わせだ。合計すると419円で、ワンコインで済む。加盟店のオーナーからも「麺大盛り、おにぎり、お茶の組み合わせで買うお客さまが多い。これらを訴求するようなポップがほしい」といった要望が寄せられているという。 麺大盛りシリーズはどの時間帯に特に売れているのか。分析すると、平日のお昼ご飯として30代男性が特に購入していることが分かった(レギュラーサイズのPBカップ麺は40~50代が購入している)。若い人のほうがたくさん食べられる、可処分所得が相対的に少ないといったことなどが背景にあると考えられる。 ローソンでは2024年度上期の商品戦略として、時間効率を意識したタイパ(=タイムパフォーマンス)、費用対効果を意識したコスパ(=コストパフォーマンス)、環境配慮などを意識したウェルパ(=ウェルビーイングパフォーマンス)のニーズを重視するとしている。2024年に麺大盛りシリーズに追加の2種を投入する際には、こうした全社の方針も意識したという。妹尾氏は「こうした商品は、他社がそこまで作りこんでいない。ローソン独自の展開だからアクセルを踏むことができた」と説明する。 シリーズ4種のうち、3種が「辛みそ」「七味」「辛コク濃厚 カレーうどん」と辛さをアピールする商品になっているのも、利用客の好みを分析してのことだ。 競合他社に目を転じると、セブン-イレブンでは消費の二極化傾向を受け、低価格の弁当を強化している。また、袋の中に複数の菓子パンや総菜パンが入った商品の売り上げが好調だ。背景には生活防衛意識の高まりがある。相次ぐ値上げラッシュで「安く、お腹いっぱい食べたい」というニーズが高まっている可能性がある。 ありそうでなかった麺の大盛りPBは消費者の支持をどこまで伸ばせるか。