コンビニ大手のローソンが東北の一部店舗で、品目・数量ともに限定的だった野菜や果物の販売を強化し、集客の力となっている。商品の目利きなどに一日の長がある各地の地元青果店と手を組み、仕入れや配送を青果のプロに任せることで、充実の青果コーナーを実現している。
(報道部・池田旭)
直送で新鮮、商品充実
旬を迎えた地場産の枝豆、福島県産のモモに青森県産のリンゴ。仙台市青葉区の「ローソン仙台大町二丁目店」に8月下旬、30種の野菜と20種の果物が並んでいた。
飲料や総菜コーナーの前の通路に6月中旬、陳列棚を新設した。徐々に認知度が上がり、午前中は主に近所の高齢者、夕方以降は仕事帰りの会社員や1人暮らしの学生らが利用する。
店オーナーの後藤昌人さん(48)は「青果の売り上げは以前の約7倍」と声を弾ませる。客からの要望を受け、翌日仕入れて提供することもある。年中無休、24時間営業の強みもあり、「おかげで常連客が増えてきた」と手応えを語る。
日曜を除き毎日行う品出しは、連携する地元の「太庄(たいしょう)青果」(青葉区)が担う。同社の担当者が仙台市中央卸売市場で仕入れ、自ら搬入。ローソンの物流センターを介する従来の流れを見直し、鮮度の向上にもつなげた。
連携するのは物流業務にとどまらない。仕入れる青果の種類や数量から売価や値引きの判断まで、多くを青果店が主導する。
新たな取り組みが始まった背景には、新型コロナウイルス下の青果店の苦境もある。太庄青果の場合、青葉区の仙台朝市とイービーンズに2店を構えるが、コロナ禍で売り上げが激減。2021年はコロナ禍前の19年の5割にとどまり、新たな収入源を求めていた。
ローソンとの連携は5月下旬に始まった。太庄青果主任の高橋はるかさん(35)は「売り上げは順調に伸びている」と感謝する。取引は市内5店に届けるまでに広がり「各店の販売傾向を把握し仕入れや補充を行っており、結果的に売れ残りも少ない」と説明する。
ローソンはこうした地元青果店との連携を20年秋に九州で試行した。東北各県では今年、宮城を皮切りに青森、山形、秋田に広げ、宮城の30店を中心に40店で導入した。
コンビニの青果販売はコロナ禍による内食需要の高まりに加え、高齢者ら「買い物難民」対策としても期待が高まる。ローソン営業本部東北営業部アシスタントマネジャーの山中賢二さん(50)は「青果店にも当社にも、そしてお客さまにも、みんなにメリットがある仕組み。高齢化の進展で『近場での買い物ニーズ』はさらに高まると見込まれ、今後も世の中の変化に対応していきたい」と話す。