日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉が大枠合意に達し、欧州産のワインやチーズ、パスタなどにかかる関税が撤廃または引き下げられることになった。店頭価格は安くなる見通しで、家計に恩恵をもたらしそうだ。スーパーなどは「積極的なセールを仕掛けたい」(岡崎双一イオンリテール社長)と、需要喚起に意欲を示す。
ワインは750ミリリットルボトルで約93円の関税がかかっており、撤廃でその分安くなる可能性がある。人気のモッツァレラやカマンベールなどソフトチーズの関税は29.8%。一定量までの枠内で関税を段階的に下げ、16年目にゼロにする。
東京都内のチーズ店を訪れた50代の女性は、「今はちょっと高い。安くなればうれしい」と話した。欧州産のチーズやワインは比較的高価だが、知名度や味への評価が高く人気がある。小売り各社は「値下げで消費者の裾野が広がる」(百貨店の担当者)と一様に歓迎ムードだ。
一方、メーカーには期待と不安が交錯する。特に乳業メーカーは、一部のチーズ原料を安く調達できる半面、「国産品に値下げ圧力がかかる。国内の酪農家が弱体化しては元も子もない」(乳業大手)と危機感を強める。ワインでも歓迎の声はあるが、「国内の中小ワイナリーへの影響が懸念される」(代野照幸メルシャン社長)という。国産ブドウを使った「日本ワイン」の成長に水を差すのではと、思いは複雑だ。
このほか、マルハニチロは「冷凍食品の材料の豚肉をデンマークなどから買っており、われわれに利益」とみるが、ある製粉大手は「欧州産パスタの競争力が高まり、手ごわくなる」と警戒している。