新型コロナウイルスワクチンの64歳以下への接種が東北でも本格化する中、若い世代で接種への忌避感が目立つ。ワクチンの効果や副反応に関するさまざまな情報が飛び交い、接種のメリットを疑問視しているためだ。専門家は科学的根拠のある情報の発信と受け止めを呼び掛ける。
JR仙台駅東口の大規模接種会場で東北大の学生や教職員への集団接種が始まった21日、駅西口周辺で喫煙していた専門学校生の男性(20)は「ワクチンは打たない」と言い切った。「副反応で死ぬ可能性もあると聞いた」という。連れの男性(20)も「マスクと消毒でコロナは防げる。どんな副反応が起きるか分からないワクチンの方が怖い」と同調した。
仙台市内で若者に話を聞くと「動画投稿サイトで『外国産のワクチンは危ない』と聞いた」(大学3年の21歳男性)、「ネットやツイッターに『打つと死ぬ』など怖いうわさがたくさんある」(専門学校生の18歳女性)など、接種への期待より不安の声が多い。
インターネットや会員制交流サイト(SNS)を主な情報源とする人々の間で特に拒否反応が目立つ。新聞やテレビも含め、メディア上に多様な情報が交錯しており、判断を迷わせている可能性がある。
会社員の男性(23)は「自分ではどうしたらいいか分からない。職場でも接種に関して何も言われていない。世論の流れを見ながら親とも相談して決めたい」と胸の内を明かす。
厚生労働省の調査によると、接種後に痛みや発熱などの症状が出るのは若者や女性で頻度が高い傾向にあるという。
20、30代では2割超える
若者がワクチン接種を忌避する傾向は、筑波大の原田隆之教授(臨床心理学・公衆衛生学)の調査結果にも表れている。
原田教授が4月、全国の男女575人に接種の意向などを尋ねたところ「絶対打つ(接種する)」「多分打つ」が計4割超、「絶対打たない」「多分打たない」が計2割弱だった。
年代別に見ると、20、30代で「打たない」がそれぞれ計2割を超え、接種するかどうかの迷いを示す「周りを見て判断」も20代で半数近くに上り、目立って多かった(グラフ)。
20代に忌避感や迷いが多い理由について、原田教授は(1)コロナへのリスク認知が低い(2)副反応への不安が大きい(3)接種のメリットよりデメリットが大きいと考える(4)ネット上などのデマ情報にさらされやすい-と推察する。
調査では20代に限らず、政府への信頼感が低い人やインフルエンザのワクチン接種をしてこなかった人は、コロナワクチンの接種を忌避する傾向にあることも分かったという。
原田教授は「科学的な根拠に基づく情報を、若者がアクセスしやすい手段や同世代のインフルエンサー(強い影響力を持つ人)を通じて伝えることなどが必要だ」と話す。