一斉休校 2009年新型インフル流行のときは…

宮城県内のほとんどの学校が、きょう2日から一斉休校となった。2009年、同じような光景があった。新型インフルエンザの世界的流行(パンデミック)で、若年層を中心に感染が広がり、休校や学年・学級閉鎖が相次いだのだ。あのとき、学校現場で何が起きたのか、当時の河北新報の記事で振り返る。
=肩書は当時のものです=

■静まる教室 感染抑止に一定の効果
(2009年11月3日朝刊)

 インフルエンザ患者で込み合う医療現場が困惑している。
 新型インフルエンザに感染して熱が下がった子どもが登校する際、「完治したことを証明するための検査をしてほしい」という保護者が後を絶たない。
 複数の医療関係者は「対応できる時間はない。医師の診断がなくても、熱が下がって2日経過したら登校して大丈夫」と強調する。
 一般的に感染症にかかった児童生徒が登校する場合、医師の治癒証明書が必要となる。文部科学省は10月19日、「証明書は不要」と改め、各教委に通知した。
 新型インフルエンザ対策を指導する文科省の通知はこれで17通目。度重なる修正に、教育現場で情報が錯綜(さくそう)している。
 文科省が例外的な措置を講じたのは、医療現場への影響が懸念されるほど学校で患者が急増したためだ。

 宮城県内では8月16日~10月24日、公私立の教育施設で確認された患者が5526人に達した。延べ391施設が休校などの措置を取った。
 仙台市若林区の連坊小路小は6学年17学級。10月26日に6学級だった閉鎖が、30日は15学級に急増した。静まり返った教室に、荒井早苗校長は「34年間の教員生活でこんな経験は初めて」と表情を曇らせた。
 閉鎖措置を取った学校では、授業時間数の確保も課題として急浮上してきた。1日の授業時間を増やしたり、学校行事を授業に振り替えたり。各学校がやりくりを迫られている。
 感染の長期化で、宮城県七ケ浜町では2度目の閉鎖を強いられた学級も出ている。中津川伸二教育長は「流行が続く場合、冬休みを削ることも検討せざるを得ない」と嘆く。
 小中学校には、保護者から「仕事があるので閉鎖は困る」「授業が増えると塾に通えない」といった反応も寄せられている。ある小学校では、子どもの面倒を見るため仕事を休んだ保護者が、転職を余儀なくされたケースがあったという。
 県内では2日、県教委が各市町村に公立小中学校の休校を要請したため、休む学校が目立った。4連休にすることで感染の抑止効果を狙った。

 厚生労働省によると、入院患者の8割を1~14歳が占める。宮城県で小学生向けの新型インフルエンザワクチン接種が始まるのは12月下旬。いかに感染を抑えるかが鍵になる。
 世界保健機関(WHO)で感染症対策を担当した東北大大学院医学系研究科の押谷仁教授は「休校は感染抑制に有効で、人的被害の軽減につながる。流行のピークを先送りできれば、ワクチンが間に合う児童生徒も増える。社会全体で意味を理解し、協力することが大事だ」と指摘する。

■授業時間数の確保へ冬休み返上 宮城の110校が休校分穴埋め
(2009年12月20日朝刊)

新型インフルエンザの感染拡大で休校などの閉鎖措置を行った宮城県内の公立小中学校のうち18市町の110校が、冬休み返上で授業を行うことを決めた。冬休みを短縮しない学校も、学習指導要領で定められた年間の標準時間数を満たすため、授業時間の確保に追われている。
 授業日を設けるのは小学校が57校で全体の13.0%。中学校は53校で24.5%を占めた。小中学校を合わせた市町村別は仙台が63校、登米7校、角田、塩釜、気仙沼が各6校など。授業日数は1、2日が多いが、4、5日の学校もある。
 角田市角田小は4年の1学級が5日間の授業を行う。学級閉鎖は計12日間に上り1日の授業時間を増やすだけでは足りなくなった。堀努校長は「児童は冬休みを楽しみにしていたかもしれないが、保護者の理解を得て授業をすることにした」と話す。
 ほぼ全学級が学級閉鎖を経験した仙台市青葉区の東六番丁小は、全学年で冬休みを3日間短縮。同校は「流行がまた起きないとは限らないので冬休みに授業を確保する」と新たな流行に備える。
 予定通りに冬休みを迎える学校の多くは通常授業日にこま数を増やすことで対応する。若林区の南材木町小は高学年が来年3月まで1日1時限増やす。2学期の終業式を午後にして、午前を授業に充てる学校も目立つ。
 宮城野区の原町小の千葉茂仁校長は「学級ごとに休業日数が異なる上、給食の振り替えも調整が大変だ。新型インフルエンザに振り回されっぱなしだった」と今年を振り返った。

◆2009年の新型インフルエンザ流行◆
4月に米国、メキシコで発生が確認された。その後世界的に広がり、6月、世界保健機構(WHO)はフェーズ6=パンデミック(世界的流行)を宣言した。日本では、5月にカナダから帰国した高校生の感染が初めて確認され、高校で集団感染が起きるなど全国的に流行した。空港の検疫強化、イベントの中止、学校休業などの対策がとられた。国内の推計受診患者は約2000万人とされ、約200人が死亡した。ウィルスはブタから人に感染した。

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