外国為替市場で歴史的な水準の円安ドル高が進む中、知恵を絞って為替変動を乗り切ろうとする動きが東北で広がっている。コロナ禍で海外旅行ができず、手元にドルがあった人は円への両替で差益確保に走り、輸入コスト高騰にあえぐ企業は、為替対策の金融サービスを取り入れてリスク回避に動く。「日銀が金融政策を変えれば、いずれは円高に向かうだろう」という期待はしぼみつつある。(経済部・菊間深哉)
企業は金融サービスでリスク回避
外貨両替大手、英トラベレックスの日本法人トラベレックスジャパンの仙台店(仙台市青葉区)には4月末、手持ちの米ドルを円に両替しようと日本人客がひっきりなしに訪れた。
コロナ禍前の2019年12月に1ドル=108~109円だったレートは、今年4月29日に一時160円台まで下がり、1990年4月以来、34年ぶりの円安ドル高水準に突入した(グラフ)。トラベレックスジャパン全店で、4月22~28日の7日間に米ドルを円に両替した客数は、1週間前の1・5倍に伸びた。
大谷淳社長は「コロナ禍前に海外旅行用に買ったドルが、今は円換算で1・5倍になっており、両替に訪れる人のモチベーションが高い。家庭にどれだけドルが眠っているのか分からないほどの勢いだ」と話す。
仙台市内で古物商「大黒屋」を3店舗展開する仙台買取館(太白区)は、4月に買い取ったドルの総額が5万ドルに達し、販売した額の6000ドルを大幅に上回った。3月は買い取り額が2万3000ドル、販売額が2万2000ドルとほぼ同額だった。4月に入り、ドルを円に両替するメリットが圧倒的に大きくなった。
桜井鉄矢社長は「ゴールデンウイーク前は例年、海外旅行のためドルを買いに来る客が多いが、今年は逆に売りに来た」と明かす。
急速な円安ドル高は、海外から部材や完成品を輸入する東北の製造業者、卸売・小売業者の調達コストを押し上げている。
七十七銀行は、将来の為替売買のレートを現時点で決める「為替予約」、将来の一定期間に使う為替レートを決めておく「クーポンスワップ」といった為替変動対策の金融サービスを提供する。利用する企業は2023年度には80社に達し、21年度の40社から一気に倍増した。
米連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利を解除した22年以降、日米金利差を意識して円売りドル買いが進んだとされるが、もはや日本の金融政策で昨今の円安基調は制御できないとの認識も、顧客の中に広がりつつある。
七十七銀市場国際部の担当者は「為替変動リスクは他人任せではなく、自分たちでコントロールすべきだという自衛の意識が、企業に高まっている。業態などに合わせ、各社ごとにオーダーメードの為替対策を提案している」と説明する。