七ヶ浜をワインの町に 地元出身箱崎さん、ワイナリー建設へCF

宮城県七ケ浜町でチリ産ワインの輸入販売を営むブエンモストが、東日本大震災で被災した花渕浜へのワイナリー建設を目指し、インターネットのクラウドファンディング(CF)に挑んでいる。同社代表の箱崎舞さん(41)はチリに約8年間暮らし、ワイナリーを巡るなどして知見を深めた。「七ケ浜にワイン文化を根付かせ、町外に七ケ浜ファンを増やしたい」と意気込む。

 箱崎さんは12年前、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員としてチリに渡った。2年間生活した村は人口約9000だったが、10以上のワイナリーがあった。
 箱崎さんは「村の時間がゆったりと流れ、人が集まるとボトルを空けて会話を楽しんでいた。住民と時間を共有するうちに村の空気感とワインが好きになった」と振り返る。
 協力隊員を終えた後もスペイン語の能力を伸ばそうと、日系商社に勤め首都サンティアゴに暮らした。その間もチリの各産地を訪ねるなどして、ワインの探求を重ねたが、東日本大震災で被災した出身地の七ケ浜が気に掛かり、起業を決意して帰国した。
 2016年12月、ブエンモストを設立。社名はスペイン語で「良質なブドウ果汁」を意味する。チリ産ワインの中でも小規模な生産者が手作業でつくる高価格帯の商品を扱い、自社輸入品の販売価格は税別3800円からだ。19年には遠山地区に小売店を構えた。
 次の目標に据えたのが、七ケ浜の畑で育てた自社ブドウによるワイン造りだ。その第一歩としてワイナリーの建設に取り組む。CFは28日までで、目標額は700万円。施設建設と醸造設備購入の総費用約3500万円の一部に充てる。
 CFには5000円から30万円までの8コースあり、金額に応じ特典がある。ワイナリーは醸造所に加えてカフェ、店舗なども備える計画で、21年8月の完成を見込む。22年からは取り寄せたブドウでワイン造りを始める。自社のブドウは、肥料にカキ殻を利用するなど海の町ならではの栽培を試みる。
 東北で最も面積が小さい自治体の七ケ浜は、三方を海に囲まれた島のような地形。箱崎さんは「他とは違う独特な時間の流れ方がある。ワイナリーを拠点に日常的にワインを楽しむ暮らしを醸成し、魅力を発信したい」と語る。

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