三井不動産と伊藤忠商事が神宮外苑再開発で異例の声明、「開発で緑の維持費を捻出」

 神宮外苑地区第一種市街地再開発事業について、事業を推進する伊藤忠商事と三井不動産が2024年7月3日と同5日、再開発の意義を説く声明を相次いで発表した。自然環境を破壊するという指摘に対し、緑の維持費を捻出するための事業だと強調し、計画への「正しい理解」を求めた。両社はどのような主張を展開したか、経緯とともに読み解く。

神宮外苑地区の再開発事業を東側から見たイメージパース。神宮球場や秩父宮ラグビー場の段階的な建て替えや、ホテル・オフィスビルなどの建設を含む複合的な再開発を計画している(出所:神宮外苑地区まちづくり)

神宮外苑地区の再開発事業を東側から見たイメージパース。神宮球場や秩父宮ラグビー場の段階的な建て替えや、ホテル・オフィスビルなどの建設を含む複合的な再開発を計画している(出所:神宮外苑地区まちづくり)

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 伊藤忠商事が声明を出したのは、事業に反対する環境活動家の行動がきっかけだ。23年10月17日、同社の東京本社敷地内にある子供向け施設などの壁やモニュメントに「木を切るな」などと落書きされる被害を受けた。さらに、24年6月21日の株主総会では、質疑応答で環境活動家と見られる参加者が長時間にわたり、再開発計画に対して持論を述べたという。こうした事態を受け、24年7月3日に声明を発表した。

 声明では、再開発は緑を守るプロジェクトであり、「環境が破壊されてしまうことを懸念されている一部の方々の誤解とは全く異なる」と強調。緑の維持費の収入源である秩父宮ラグビー場や神宮球場などの施設が老朽化していることから、建て替えが喫緊の課題だと訴えている。

 再開発事業には同社東京本社ビルの建て替えが含まれており、地域一体開発によって、単独で建て替える場合よりも大きなビルを建設することが可能になるとも説明。敷地の資産価値を高めることで、神宮外苑の施設の建て替え工事費を捻出し、建て替えた施設から生まれる収益で緑を守り続けると主張している。

 同社の広報担当者は日経クロステックの取材に対し「今後、近隣の方々の意見をしっかりと伺いつつ、関係者や行政と協議しながら計画を推進していく」と述べた。

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