電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の基幹部品として欠かせないリチウムイオン電池をめぐる競争が激しさを増してきた。三洋電機は18日、太陽光発電所や携帯電話基地局など公共用途向けの蓄電事業に経営資源を投入する方針を打ち出すとともに、エコカー向け電池の供給について自動車メーカー6社と調整していることも明らかにした。一方、異業種ながら昨年夏に本格参入を表明した三菱重工業の実証工場が同日、長崎造船所(長崎市)内に完成。自社製品へ組み込んで事業を軌道に乗せた上で、さまざまな分野への供給を狙う構えだ。
三洋電機は「米国や欧州の環境政策次第で大きく伸びてくる」(本間充副社長)との判断から、大型蓄電事業部を10月に立ち上げて態勢を整備。公共用途向け大型蓄電池の世界市場は2020年度に2兆円に膨らみ、自動車向けの1.3倍以上になると見込んでおり、自動車向けと並ぶ環境エネルギー事業の柱に育てるため15年までに売上高1000億円の達成を目指す計画だ。
すでに世界最大級の1500キロワット時の電力量を誇るバッテリーシステムを開発し、今夏完成した同社の加西工場(兵庫県加西市)に1000台を設置。6月には米カリフォルニア大学サンディエゴ校と環境エネルギーの共同開発で提携した。
また、エコカー向けの供給について本間副社長は、公表済みのスズキと独フォルクスワーゲングループを含めて「6社と話がある」と説明。供給先拡大が近く実現する見通しを示した。
一方、三菱重工のリチウムイオン電池実証工場は12月に稼働を始める。当面は自社製のフォークリフトやクレーン、大型電気バスの駆動用のほか、太陽光・風力発電設備の蓄電用、離島での電源確保用として供給する。生産能力は年6万6000キロワット時(中型電池換算で約40万個)で、投資額は約100億円。
電池性能の向上や原価低減を図りながら、11年には本格的な量産工場を整備し、生産能力を13年をめどに現在の5倍近い年30万キロワット時に引き上げる。将来的にはスマートグリッド(次世代送電網)関連の需要も取り込みたい考えだ。
三菱重工は1988年以来、九州電力と共同でリチウムイオン電池の技術開発を進めてきたが、「環境規制の中で急速な需要拡大が見込める」として本格参入を決めた経緯があり、「新事業の柱に育てたい」としている。(渡部一実、森川潤)