三陸カキ出荷1割に激減「金も船も資材もねえ」

東日本大震災の影響で、全国2位の出荷量を誇る宮城県産のカキの今季の出荷量が例年の1割に激減する見通しとなった。県漁協の調査で分かったもので、同じ三陸産で全国5位の岩手県も「出荷量はほとんど見込めない」(岩手県漁連)という状況。漁具不足などによって三陸産カキ復権の見通しも立たず、漁業者の苦難が続いている。(荒船清太)
 宮城県漁協によると、今季の出荷見通し(むき身)は約400トン。各地区の養殖設備や組合員の状況を調査して推計したもので、平成21年の出荷量(4918トン)の1割以下となった。
 「金もねえべし、船もねえべし、資材もねえ。やりたくてもやれない」。同県石巻市の雄勝地区で養殖業を営む佐藤和夫さん(56)は嘆く。
 やる気はある。毎日、石巻市の都市部から車で雄勝地区に通い、養殖用の浮きに通すロープを結わえたりしている。だが、「養殖用の棚を固定する太めのロープが手に入らない」。漁業者からの注文が殺到し、生産が追いついていない。船も流され、養殖棚を運ぶ県漁協の船も順番待ちだ。
 県漁協雄勝支所運営委員長の阿部賢市朗さん(62)はカキは成育に2~3年はかかるため「生産は当面復活しない」と話す。
 漁協でも業者に漁具を発注しているが、「8月までに出すといっていたのが、いまだに来ない」。韓国や中国から漁具を仕入れはじめた地区もあるという。
 阿部さんによると、最大の難関はがれきだ。「海中に沈んだ民家の残骸などのがれき撤去が進まず、棚や網も置くに置けない」という。
 一部には種ガキを海中に入れて生産を始めた漁業者もいる。佐藤さんは「できることからやるしかない。海で生きてきた漁師は海で生きるしかないから」と話した。
 一方、築地市場(東京都)ではカキの値段が高騰。今月は3割程度高い値段で取引されている。
 仙台市に拠点を置くカキ料理専門店「かき徳」では、震災以来、生カキのメニューを断念。昨季より前に収穫された冷凍カキを使った料理を提供している。カキの名産地、宮城県松島町では広島県産を売る店が出始めている。
 21年の農林水産統計によると、全国の養殖カキの総生産量(むき身)は3万3830トン。都道府県別では、(1)広島(1万9147トン)(2)宮城(4918トン)(3)岡山(4058トン)(4)兵庫(1416トン)(5)岩手(1274トン)の順だった。

タイトルとURLをコピーしました