三陸鉄道が全線開通 台風19号で被害―住民ら「待っていた」・岩手

昨年10月の台風19号で大きな被害を受け、一部区間で運休が続いていた三陸鉄道(本社岩手県宮古市)が20日、約5カ月ぶりに全線開通した。新型コロナウイルスの影響で記念式典は中止となったが、記念列車を運行し、出発式を開催。住民らは「みんなが待っていた」と運行再開を喜んだ。

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 この日は強風のため、運休となっていた区間の一部を含め、断続的に運転が見合わせられた。出発式で同社の中村一郎社長は、全線運行再開について「全国の多くの皆さまのご支援のたまものだ」と謝意を表した。

 会場となった陸中山田駅では、大漁旗を振って記念列車の運行を見送る地域住民の姿も。同僚や商工会の仲間と旗を振りに来た銀行員の浅利薫さん(47)は「地域にとって待ちに待った日。休みの日に乗りに来たい」と話した。2人の娘を連れて列車を見に訪れた岩手県山田町の渡辺典子さん(31)は「いつになるかなと思っていたら、こんなに早く再開すると聞いてびっくり。みんな待っていたと思う」と笑顔で語った。
 岩手県沿岸を縦断する同鉄道は、台風19号で盛り土の流出やトンネルへの土砂流入など93カ所に被害が発生し、一時約7割の区間が運行できなくなった。復旧した区間から随時運行を始め、20日に最後の運休区間である陸中山田―釜石間が開通。東日本大震災からの復興の象徴的存在としてファンも多く、台風被害では約4000万円(2月末現在)の義援金が寄せられた。
 同鉄道は震災による津波被害で全線不通となったが、2014年4月に南北リアス線が全線復旧。昨年3月には宮古―釜石間のJR山田線が移管され、久慈―盛間の163キロをつなぐ「リアス線」として新たに開業していた。22日には、五輪の聖火を「復興の火」として運び、停車駅に展示するイベントが予定されている。

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