上海余話 超高層ビルの呪い

「超高層ビルの呪い」と呼ばれる歴史的なジンクスがある。ニューヨークで1931年に完成したエンパイアステートビル(443メートル)は29年に始まった世界恐慌に、98年完成のマレーシアのペトロナス・ツインタワー(452メートル)は97年からのアジア通貨危機に重ね合わせて語られた。
 森ビルが建設した中国一の高さを誇る上海環球金融センター(492メートル)も2008年の完成直後、リーマン・ショックに見舞われた。新たな摩天楼の完成が経済の低迷を呼び寄せたというのだが、実のところ、景気循環のサイクルが超高層ビル建設のタイミングに偶然重なっただけだろう。
 だが上海ではいま、14年に「呪い」が現実になるのではないか、との疑心暗鬼が広がっている。上海環球金融センターのすぐ隣に竜が空に昇る姿をイメージした外観の高さ632メートルの超高層ビル、上海センターが完成する予定だからだ。ジンクスなど信じそうもない米国人ビジネスマンまでが「中国の不動産バブル崩壊の象徴になるのではないか」と顔をしかめる。
 上海では建設中のマンション価格がここ数カ月で20~40%も下落し、高値で買った客が業者に詰め寄る騒ぎが頻発している。14年を待たずに「呪い」が証明される日が来るのかもしれない。(河崎真澄)

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