上野動物園(東京都台東区)で28日、ホッキョクグマやアザラシ、アシカなど北極圏に暮らす動物を一体的に飼育・展示する新施設「ホッキョクグマとアザラシの海」が公開される。生息域が近い動物を集め、野生に近い迫力ある動きを引き出すのが狙い。今後もキリンやシマウマを集めたサバンナゾーンなどを設ける方針で、動物本来の行動や能力を見せる「行動展示」で入園者を集める旭山動物園(北海道旭川市)に負けない新たな「顔」にしたい考えだ。
新施設には、ホッキョクグマ2頭、アザラシ2頭、アシカ5頭を展示。同じく極地に住むシロフクロウ2羽やスバールバルライチョウも展示する。
絶滅危惧(きぐ)種であるホッキョクグマの飼育舎は、プールを含む放飼場の面積を約3倍に拡張。北極圏に近い環境を再現するため、アザラシとアシカのプールを、ホッキョクグマ舎とガラス1枚隔てて設置した。プールの深さに変化をつけることで、のびのび動ける環境を整え、水中でのダイナミックな動きが観察できるようになった。
ホッキョクグマの子育てに配慮し、入園者の声が届かない静かな空間を保った産室なども用意した。
立体的な構造にしたことで、入園者はプールの上下などさまざまな角度から生態を見られるようになっている。
総工費は約14億円。日本宝くじ協会からの助成金で昨年6月から整備を進めてきた。9月策定の今後10年間の都立動物園整備・改修計画「マスタープラン」で、上野動物園は野生動物保全の重要性を訴えるため、生息地ごとのゾーンにまとめるとした整備方針を打ち出しており、今後も動物本来の生態を体験、観察できる施設を整えて入園者の増加を目指す。
担当者は「ホッキョクグマがアザラシ目がけて突進し、それに気づいたアザラシが逃げる様子など、動物の魅力ある生態を観察してもらえる機会が増える」と話している。