下水汚泥がガスや電気を生み出す!すでに実用化している「バイオガス」

原発再稼働の是非が議論されるなか、日本の技術者によって新たなエネルギーの開発が進んでいる。太陽光や風力だけではない、日本には知られざる「国産資源」がまだまだ存在する。我が国は、実は資源大国だったのだ!!
◆下水汚泥からガス&電気が! 都会のエネルギー
 都市部には、都市部ならではの国産資源が存在する。大量の生活排水を資源として活用しているのが神戸市だ。市内の人口155万人のうち、東灘処理場は37万人分の下水処理を行っており、その過程で発生する消化ガスを主原料としたバイオガスを精製、自動車用燃料や都市ガスとして直接、利用している。いずれも全国初の取り組みで、経産省/NEDOの「新エネ100選」にも選ばれたという。
 東灘処理場を訪れると、高さ28mの巨大な卵形のタンクが3つ並んでいた。タンク上部に上り、覗き窓から見ると、下水汚泥からボコボコと泡が生じている。汚泥を発酵させて、可燃性ガスのメタンを多く含む消化ガスを発生させているのだ。しかし、二酸化炭素や硫化水素など不純物が多い消化ガスは、そのままでは良質な燃料ではない。そこで神戸市は神鋼環境ソリューションと協力し、’08年にガス精製装置を導入。不純物を取ることで、消化ガスをメタン98%の高純度の燃料「こうべバイオガス」へと生まれ変わらせたのだ。
 タンクの裏に回ると、バイオガス補給所「こうべバイオガスステーション」があった。ここで市バスや公用車、運送業者の車などが、バイオガスを燃料ボンベに充填していく。「’11年度はのべ1万3000台にガスを充填した」(神戸市)というから本格的だ。車両へのガス補給は有料だが、それでも通常の天然ガスに比べると半分ほどの値段だという。’10年からは大阪ガスとも協力、同社の導管に直接、バイオガスを注入し始めた。現在は年間80万立方メートル、約2000世帯の都市ガスとして活用されている。化石燃料ではなく、下水から発生するガスを自動車燃料や都市ガスとして利用することで、CO排出削減にも貢献。年間で約2000tの削減効果があるという。そのうえ、本来の目的である水質浄化と臭いの除去、さらには「バイオ分解後の汚泥は肥料として利用していく予定」(同)というから、非常にムダがない。
 ’12年7月からは、さらなる効率化と廃物利用の取り組みも始まった。「KOBE グリーン・スイーツプロジェクト」と名付けられた計画では、間伐材や剪定枝と、食品生産過程での廃棄物を下水汚泥と混ぜることで3000世帯相当の都市ガス供給増量を目指す。
 そのほかの地域でも、下水処理の活用が進んでいる。東京都は、消化ガスを燃料とするバイオマス発電、下水処理水の放流の落差を利用した小水力発電、下水汚泥を炭化し火力発電所の代替燃料とする「汚泥炭化」、焼却炉の廃熱などを活用、冷・温熱を供給する地域冷暖房などさまざまな事業を行っている。都市の資源として、下水汚泥に注目が集まっているのだ。
取材・文/樫田秀樹 志葉 玲 北村土龍

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