不名誉な都市伝説 仙台「美人いない」本当?

「仙台市は名古屋市、水戸市と並ぶ日本三大ブスの産地」。今春、就職で関東から移住し、不名誉な都市伝説を耳にした。仙台の女性を取り巻く耳障りな称号は 流布されて久しいという。真偽を探れば、作家の暴言説や仙台藩の武家文化からの由来など諸説浮かぶ。(報道部・鈴木俊平)

<単なるデマか>
そもそも本当に仙台は不美人が多いのか。自分なりに実態を把握してみようと12日午後、大勢の人が行き交う青葉区のJR仙台駅前ペデストリアンデッキに立ち、擦れ違う女性100人を観察してみた。
あくまでも記者の主観になるが、「魅力的と感じた」人は7割を超え、都市伝説とは懸け離れた結果になった。やはり単なるデマにすぎないのか。
学術的に研究されていないか調べると、1人の研究者が見つかった。臨床死生学や宗教心理学を研究する東北大大学院文学研究科の大村哲夫助教だ。
まず大村氏が挙げたのは作家坂口安吾の発言をルーツとする説。1951年に取材で仙台を訪れた坂口は新聞社の取材に「仙台の町は今後きれいに発展するだろうが、美人がいないのが残念」と語ったという。
「取材前日に坂口が接待を受けた仙台の飲み屋に、好みの女性がいなかったせいではないか」と大村氏は推測する。作家の不満が独り歩きして不名誉な風評にまで発展したとのことらしい。
大村氏が独自に唱えるのが「性格説」だ。江戸時代に62万石を誇った伊達家は武家文化が色濃く、女性も家の格式で格好や振る舞い、話し方が決まっていた。個性は生まれにくく、武家以外の人間には気位が高く見られがちだったという。
「『ブス』という言葉は容姿についてだけではなく、『性格が悪い』という意味でも使われる。見た目を表現したのではない」

<ネットで拡散>
大村氏は不名誉な称号が消えない理由として、インターネットなどで現代人が飛びつきやすい物語として拡散したせいではないかとみる。「仙台はきれいな人がたくさんいる」と笑い、さらなる調査、研究に意欲を見せた。
記者が「仙台人」となって2カ月半、都市伝説は長い誤解による産物と分かった。地元の知人女性は「飲み会の席などで自虐的に使うこともあるけど」と余裕の表情で語った。さらりと流す包容力、笑いに変える魅力も加わって、風説が消え去る日は遠くないだろう。

[メモ]「仙台ブス説」の由来には諸説ある。「仙台藩主伊達政宗が参勤交代の際に美女ばかり江戸に連れて行った」「3代綱宗に見初められて囲われるのを拒み、殺害された吉原の遊女の呪い」といった伊達家にまつわる話も多い。

タイトルとURLをコピーしました