不正横行ウェブテスト 就活生約1割が「不正した」 採用側も「倫理観任せ」

企業の採用試験のウェブテストを就職活動中の大学生に代わって受験する「替え玉受験」をしたとして、警視庁が関西電力社員を逮捕した事件。新型コロナウイルスの感染拡大以降、入社試験のウェブテストを取り入れる企業は増加している。企業側は会場準備の必要がなく、就活生にとってはパソコンがあれば自宅で受験でき、地方に住む学生の負担も少なくなるなど、双方にメリットがある。一方で、替え玉受験などの不正は横行し、公正さには課題が残る。 【写真】「替え玉受験」で逮捕された田中信人容疑者 就職情報会社のディスコが全国の主要企業約1万社を対象に行った調査によると、コロナ禍前の令和元年には、30・3%の企業が新卒採用にウェブテストを導入。コロナ禍以降では、2年55・1%、3年54・5%と大幅に増加した。 一方、ウェブテストは監視の目がなく、21日に私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕された関西電力社員、田中信人容疑者(28)が関与したような「替え玉」や、仲間で協力しての受験、カンニングなど不正が横行しているのが現実だ。ディスコが3年7月に就活生1200人に行った調査では、8・4%が「自分が受験した企業で不正の経験がある」と回答。「友人などの受験企業を手伝った」としたのも9・3%だった。 警視庁は、田中容疑者が関与した替え玉事件で、書類送検された女子学生を含む就活生の男女5人について捜査。田中容疑者が代行した会社は商社や保険会社、銀行などで、東証プライム上場企業も含まれていたという。5人のうち4人は選考を辞退、1人は内定を辞退したという。 なりすまし防止のため、遠隔で監視するシステムもある。教育支援業「データミックス」(東京都千代田区)のシステム「エクサート」は、ウェブテストを受験する際、受験生のPCのカメラを利用し、試験前の受験生の本人確認や、受験中の様子を試験官が遠隔監視できるサービスで、目線や顔の動きが不自然ではないかを確認する。 だが、書類送検された女子学生は替え玉が発覚するのを逃れるため、テスト画面を田中容疑者に共有し、問題を解いた田中容疑者が答えを女子学生に伝えていたこともあったとみられる。女子学生は長い髪の毛に隠したイヤホンで、答えを聞いていたという。 徹底した対策は難しい。「不正があるのは承知しているが、学生の倫理観に任せている」。ある大企業の採用担当経験者は話す。監視サービスを利用することを検討したが、コスト面から見送ったといい、「怪しいと思っても、就活生本人に聞けない。エントリーシートや性格検査と併せて複合的に判断するしかない」と話した。 就職活動のウェブテストを巡る不正の横行に、捜査関係者は「正直者がばかを見る状況。捜査を進めていく」と話した。

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