単身世帯が増え、少子化が進む中、「家族」をテーマとする“研究所”が今年、相次いで設立された。20、30代の若い家族のライフスタイルを研究する「イマドキ家族研究所」と家族の絆(きずな)向上を目指す「家族力研究所」だ。この時代にあえて「家族」を研究する背景には、変わりゆく家族像を的確にとらえ、新たなマーケティングを組み立てたい企業側の狙いがある。調査の結果で見えてきたのは、長引く不況を乗り切る力となる「家族力」だ。(道丸摩耶)
◆改善方法もフォロー
「生命保険ビジネスに携わるものとして、家族に対するお客さまの思いに応えたいと思っている。日本の家族の皆様に役立てることはないか、と研究所を立ち上げた」
10月中旬、AIGエジソン生命保険(東京都墨田区)の石田雅彦経営企画本部長は、家族力研究所のセミナーでそう訴えた。
「円満家族を増やしたい」との願いから「家族力研究所」を立ち上げたのは今年7月だ。第一弾の調査として、『「婚活」時代』などで知られる社会学者の山田昌弘氏が監修した『現代家族の“愛情バランス”意識調査』の結果を発表。第二弾では、県民性研究で知られる矢野新一氏の監修で、「家族意識と県民性」を調査した。いずれの調査でも、どうすれば家族の危機を防げるかや円満な家族になるためのポイントなど、家族関係の改善方法にまで言及した。
◆年収低くても幸せに
一方、9月末にトヨタマーケティングジャパン(文京区)などが立ち上げたのが「イマドキ家族研究所」だ。トヨタ宣伝部が中心となって1月に設立されたトヨタマーケティングジャパンは「草食男子」や「イクメン」など、昔と異なる価値観を持つ若い世代に注目。「草食男子」の名付け親であるコラムニストの深澤真紀氏が研究所代表を務め、研究員には家族や親子研究の第一人者が名を連ねる。
研究所が全国1万人を対象に行った調査から浮かび上がったのは、「家族旅行にはほとんど行かない」ながらも、父親が「家族とともに過ごす時間が取れ」、「育児に参加する」家族像だ。晩婚化や少子化ばかりが注目されるが、若い世代の「家族の絆」は弱まっていなかった。
「不況になると家族に立ち返る動きが進むといわれるが、イマドキ家族は年収は低くても、賢く幸せな生活を送っている」とトヨタマーケティングジャパン。
「現代家族」の研究が盛んな理由は、「家族力」には不況を乗り切る力が秘められているからかもしれない。