与える海、カキ成長早まる 気仙沼「復興の象徴に」出荷開始

東日本大震災後、宮城県気仙沼市の沿岸部で、通常よりもカキの成長が早まる現象が起きている。例年の2倍のスピードで大きくなっているといい、一部の漁業者は出荷を始めた。関係者は「津波は水産施設を壊滅させたが、回復のスピードもすごい」と話している。
 気仙沼市唐桑町舞根地区で養殖業を営む畠山哲さん(40)は、カキの成長に驚いている。昨年6月ごろ、1、2センチの大きさで仕込んだ稚貝が、既に最大10センチ程度にまで育った。通常の倍のスピードという。
 唐桑のカキは通常、穏やかな湾内で2年ほどかけてじっくりと成長させる。畠山さんは来年秋の収穫を予定していたが、予想以上に大きくなったこともあり、19日から加熱用として一部を出荷することにした。
 地区では昔から、「津波の後は貝類の成長が早い」と言われていた。畠山さんは「言い伝え通り大きなカキになった。復興の象徴として、多くの人々に食べてもらいたい」と語る。
 同市階上地区でも、昨年秋に仕込んだカキが、7、8センチにまで成育している。養殖業の畠山輝夫さん(66)は「震災直後の海の状況を考えれば、ここまでカキが成長するのは驚きだ」と話す。
 宮城県気仙沼水産試験場も同様の情報を把握。酒井敬一場長は「養殖業の再開の遅れで、餌を取るライバルが少なく、カキにとって恵まれた生育環境になっていることが大きい。津波で流された土壌の窒素系養分が、海中に多く溶け込んでいる可能性もある」と推測する。

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