電気自動車(EV)市場が減速傾向のなか、欧米や日本の自動車メーカーが「脱EVシフト」を進めている。トヨタ自動車も2026年のEVの世界生産台数の計画を従来の150万台から100万台に縮小する。一方、トヨタの〝お家芸〟であるハイブリッド車(HV)は好調で、なかでもEVとエンジン車の要素を兼ね備えたプラグインハイブリッド車(PHV)の生産を拡大する方針だ。
トヨタは縮小の方針を部品メーカーに伝えた。ただ、同社のEV世界販売実績は23年が約10万台、24年は7月までで約8万台で、計画縮小後もハイペースの増産を進めることに変わりはない。
EV市場では中国メーカーの低価格攻勢が欧州勢などの経営に打撃を与えている。
ドイツ大手フォルクスワーゲン(VW)は本拠地であるドイツ国内の工場閉鎖を検討する。ドイツのメルセデス・ベンツやスウェーデンのボルボ・カーは「完全EV化」の目標を撤回した。米国勢もフォード・モーターが大型SUVのEV開発を中止したほか、ゼネラル・モーターズが大型EVの生産を延期するなど戦略転換を余儀なくされている。
EVをめぐっては、ガソリン車よりも高い価格に加え、航続距離への懸念もあって需要が一巡したとの見方がある。そこでトヨタが力を入れているのが、ガソリンも使えるが外部からの充電も可能で、日常の走行はEVとして使えるPHVだ。
メーカーや業界団体の統計も「電動車」としてEVにPHVを含める傾向が強く、EV大手として知られる中国の比亜迪(BYD)も、販売台数は実はEVをPHVが上回っている。
EVの出遅れが指摘されてきたトヨタだが、ここにきて得意とするHVやPHVが強みを発揮している。燃料電池車(FCV)でもBMWと提携を拡大しており、「全方位戦略」を加速させる狙いだ。