世界的に見ても高水準のサービスが至るところで受けられる「サービス先進国」、日本。そのホスピタリティは「おもてなし」として、いまや世界から注目されています。それゆえか、日本人のサービスに対する目は他国と比較してかなり厳しくなっているよう。
アメリカン・エキスプレス・インターナショナルが日本、アメリカ、カナダ、メキシコ、イタリア、イギリス、インド、香港、シンガポールの9市場を調査した結果、日本人のサービスに対するシビアさが浮き彫りになりました。
「お・も・て・な・し」が原因?
調査では9市場各1000人(計9000人)に「何回までならひどい顧客サービスを我慢できるか」と質問。そこで「1度でも酷い顧客サービスを受けたら、直ちに別の会社に変える」と回答した割合は米国32%、カナダ32%、メキシコ30%、イタリア32%、英国37%、インド31%、香港23%、シンガポール33%と各市場が軒並み3割程度に留まるのに対して、日本では56%と突出して高い割合となりました。
1度でも酷いサービスを受けたら、その企業を継続して利用することはないという日本人の傾向は、世界と比べるとかなりシビアであることがわかります。立教大学大学院ビジネスデザイン研究科の野崎俊一教授はこの結果を
「日本人は一度でも酷い顧客サービスを受けた場合、クレームよりも他企業を選択するスイッチを働かせる傾向が強い」
と分析。不満な点を指摘して改善してもらうよりも、自ら他をあたった方が角を立てなくて済むという日本的な価値観がこうした傾向の根底にあるのかもしれませんね。
このほかの質問でも、日本人のサービスに対する意識が世界基準とは少し違っていることが分かりました。
たとえば「顧客サービスを担当するプロの態度として最も重要だと思われるもの」を聞いてみると、米国、カナダ、メキシコ、英国、インド、香港、シンガポールで最も多く選ばれたのは「効率を重んじる 質問・取引への素早い対応」という項目。一方、日本では「礼儀正しい 真心を込めて顧客に接する」との回答が最も多くなりました。
サービスにおける礼儀は重要な要素に感じられますが、これが突出するというのは「サービス=おもてなし」という意識が強い日本ならではの傾向です。
ただ「じかに顧客サービスを受ける際に待てる時間は何分ですか?」という質問で、日本は「13分」で9か国中2番目に短いという結果に。素早い対応は当たり前で、そのうえ礼儀を重んじるべきということでしょうか。ここにもシビアな”お客様”の目が光っています。
海外に行くと、日本の細やかなサービスが当たり前でないことにびっくりすることがあります。記者も不便な思いをして「言わなくても気づいてよ…」と思った経験があります。お願いしなくてもニーズを察してくれる日本の「おもてなし」が、各国とは違う日本独自の「サービス」への意識につながっているのかもしれませんね。