世界のモバイルメッセンジャー市場に戦雲がたちこめている。米ワッツアップ、中国のウィーチャット(微信)に次ぐ世界3位のLINE(ライン)が新規株式公開(IPO)で巨額の資金を確保した上で、本格的な主導権争いに打って出る準備を進めているからだ。
■日米で同時上場推進
LINEの親会社である韓国ポータルサイト最大手ネイバーは16日、金融監督院の電子公示で、子会社のLINEが日本と米国での上場を検討していることを明らかにし、東京証券取引所など関係機関に上場申請書類を提出したと説明した。「最終的に上場するかどうかや時期は決まっていない」としたが、上場時期は迫っているとみられる。
LINEが韓国ではなく日本でIPOを行う背景には、日本中心の事業構造がある。LINEはネイバーが100%を出資する子会社だが、本社は東京にある。サービス開発も日本で行っている。役員8人のうち、代表取締役2人を含む6人が日本人だ。営業利益の80%も日本で生じている。日本がサービスの拠点である点から、まずは日本でIPOを実施する格好だ。
予定通りに上場できれば、LINEの企業価値は1兆円を超えるとみられる。読売新聞など現地メディアは「LINEが今年日本で株式を上場する企業で最大規模になる」と報じた。
東京株式市場でのインターネット企業によるIPOは同じく韓国系のネクソン・ジャパン以来となる。韓国最大のオンラインゲーム業者、ネクソンの日本法人、ネクソン・ジャパンは2011年12月、東証に上場し、当時の時価総額は5560億円に達した。それまでのインターネット企業の上場はソーシャルゲーム業者のグリーが最大d,08年12月の時価総額は約1000億円だった。
LINEが企業価値でネクソン・ジャパンの2倍、グリーの10倍に達すると推定されるのは、投資家がLINEの将来性を楽観していることの表れだ。
LINEが株式の20%を株式市場で公開した場合、2000億円以上の資金を調達できることになる。
■欧米に進出
LINEは全世界で4億8000万人のユーザーを確保している。スマートフォン(多機能携帯電話)やパソコンで無料でメッセージを送受信できるメッセンジャーサービスを土台として、モバイルゲーム、位置情報に基づく広告、モバイルコンテンツポータルなどへと事業を拡大してきた。
ゲーム、アプリ、漫画など外部業者が開発した多彩なコンテンツを販売する「プラットフォーム」事業モデルを構築し、成長価値が高まった。昨年の売上高は518億円で、事業性が立証された。
しかし、LINEは事業が日本をはじめとするアジアに偏っていることが弱点だ。ユーザー全体の8分の1が日本に住んでおり、残りもタイ、台湾などアジア地域が多い。
一方、北米、欧州での影響力は小さい。市場調査会社スタティスタによると、ドイツのiPhoneユーザーの91%がワッツアップを使用しているが、LINEのユーザーは1%にとどまった。正確な数字は明らかになっていないが、米国でもLINEのユーザーはまだ少ない。ワッツアップはフェイスブックに買収され、サービスの改善でユーザー層を拡大している。
このため、LINEは日本だけでなく、ニューヨーク証券取引所(NYSE)や店頭市場ナスダックなど米国の証券市場に同時上場することも検討している。米国上場で現地での知名度を高め、資金を確保した上で、大規模なマーケティングを展開し、ワッツアップに追い付く戦略だ。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは16日、LINEがニューヨーク株式市場に上場申請を行う可能性があり、上場時期は早ければ今年秋になると報じた。ネイバーのファン・インジュン最高財務責任者(CFO)は「(上場申請は提出したが)まだ最終的に上場するかどうか、上場先、上場時期などは決まっていない」と説明した。