来年4月に迫った電力小売り完全自由化をめぐる覇権争いは、営業力がものをいうガチンコ勝負となりそうだ。
「関電がKDDIと組んで殴り込んでくるんだから、しっかり防衛しないといけないな」
料金規制などが撤廃され、新規参入を促す完全自由化へ向けて、関西電力とKDDIが、さらに中部電力とNTTドコモが提携交渉をしているとの観測が業界を駆け巡ると、最大のライバルとなる東京電力サイドの大手企業幹部は警戒感をあらわにした。
もっとも、これらの組み合わせはかねてうわさされていたが、表沙汰になり、完全自由化後の覇権争いの陣容がはっきりした。
まず動いたのは東電だった。通信でソフトバンク、LPガスでは日本瓦斯、TOKAIホールディングス、ウェブサービスではリクルートホールディングスに加 え、共通ポイント「Tポイント」を発行するカルチュア・コンビニエンス・クラブと「ポンタ」を発行するロイヤリティ マーケティングと矢継ぎ早に提携協議 を開始した。
中でも、ソフトバンクは提携の柱だ。東電にとってソフトバンクは供給エリア外である中京地区や関西地区での新規顧客獲得のための強力なパートナーとなる。ソフトバンクにとっても、電気は携帯電話やインターネットの契約獲得のための有力なツールとなり得る。
この東電陣営に対抗するのが今回の関電とKDDI、中電とドコモだ。両陣営の狙いも、基本的には東電とソフトバンクと同じで相互補完にあるとみられている。
鍵となるのは営業力
関電・KDDI連合の動きが明らかになったことで、「先行しているはずの東電のお尻に火が付くのではないか」(業界関係者)との見方が出ている。
というのも、首都圏を抱える東電管内は、電力需要が高い肥沃な市場であり、完全自由化に当たって、他の電力会社や新規参入組は「狙うは東電管内」と口をそろえているからだ。
業界関係者は「営業力が足りないことを自覚している東電が、自らの牙城が草刈り場になることを恐れて、各業界で営業力に定評のある大手企業と組むことでガードを固めようとしている」とやゆする。
確かに、ソフトバンクは日本電信電話(NTT)の牙城を崩してきたし、日本瓦斯はきめ細かな戸別訪問による徹底したドブ板営業でLPガスのシェアを伸ばし てきた会社だ。対抗馬の浮上を受けて、「提携協議を加速させ、次々にサービスを発表する可能性がある」(業界関係者)。
サービス内容の要となる電力の託送料金(電力会社の送電網を使い他の電力会社が送電する料金)が明らかになるのは7月以降とみられる。それからはセット販売の料金も含めて、3大陣営を軸にしたサービス創造合戦が繰り広げられそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)