【AFP=時事】トイレで用を足した後、通常はそのまま下水に流される尿だが、将来的にはこれが有効活用されるかもしれない。人の尿が、環境配慮型の建築資材として生まれ変わる可能性があるのだ。
南アフリカにある大学の研究チームが開発に成功したのは、人の尿を使った「れんが」。環境に優しい建築資材の探求における最新の革新的成果の一つだ。
この種のものとしては世界初となるこの「バイオれんが」の開発をめぐっては、粘土やコンクリートでできた一般的なれんがに代わる持続可能な代替物へとつながることが期待されている。
試作品のバイオれんがは、貝殻の自然形成に類似した方法で尿から「成長」させた。れんがの形成には6〜8日かかる。
この画期的な発明を考案したのは、南ア・ケープタウン大学の学生2人と講師1人からなる研究チームだ。
政府が運営する水研究委員会からの助成を受け、バイオれんがの実行可能性の研究が昨年、合成尿素を用いて始められた。その後、研究は人の尿を使用する段階へと移行した。
1年後、研究チームは初のバイオれんがを実験室内で作ることに成功した。バイオれんがを作るには、尿と砂とバクテリアを混ぜ合わせ、「微生物炭酸塩沈殿」として知られる自然作用を利用する。
研究はまだ初期段階にある。これまでのところ、れんがを1個作るのに最大で30リットルの尿が必要となる。研究で用いた尿は、大学の男子学生らから専用の小便器を通じて提供されたものだ。
現在、最初の試作れんが3個が公開されている。重量感のある灰色のれんがは、標準的な石灰岩と見分けがつかないほどだという。
■臭いはない
UCTの土木工学修士学生のスザンヌ・ランバート氏は、「この製法はサンゴが形成される方法を再現しており、この自然作用でセメントが生成される」と説明した。
粘土を焼成した従来型のれんがは、窯を使って作られる。約1400度の高温で乾燥させるのだが、この過程では大量の二酸化炭素が排出される。
それに対し、バイオれんがは、ウレアーゼと呼ばれる酵素を生成するバクテリアを混合した砂から「成長」させる。ウレアーゼは尿に含まれる尿素と反応し、砂と結合するセメントに似た化合物を生成する。
この生成物は、どのような形状にも成形でき、常温で乾燥する。そのため窯が不要で、温室効果ガスは排出されない。また、バイオれんがに尿臭はない。2〜3日乾燥させると強いアンモニア臭は消えるという。
研究チームの一人、ブクヘタ・ムクハリ氏によると、バイオれんがの強度は特定の建築要件に合わせることが可能だが、これまでにできたバイオれんがは「市場に出回っている一般的なれんがと同程度の強度を持つ」という。
米国ではすでに、バイオれんがの製造が進められているが、これには合成尿が使われている。バイオれんがに自然のままの人の尿を使用したのは、今回の研究が初めてだ。
研究チームのメンバーで、UCT講師のダイロン・ランドール氏は、「現時点では、れんがを1個作るのに20〜30リットルの尿が必要となっている。これは多いように思われるが、尿の約90%は水であることを忘れてはならない」と述べ、今後に向けて尿の量を減らすことについても検討中だと説明した。
「数年以内に今よりはるかに良い結果が得られると確信している」 【翻訳編集】AFPBB News