世界最大の広告会社とSNSが手を組む WPPとフェイスブック、データ活用で提携

告世界最大手WPPは7日、米フェイスブックとの提携を発表した。傘下のData Allianceを通じ、「Facebook」利用者データの活用で協力する。WPPグループのメディアエージェンシー・グループエム、市場調査会社カン ター、ワンダーマン傘下でデータマーケティングを手がけるKBMグループが持つ消費者データと、Facebook利用者データを統合し、マーケティングに 使えるようにする。契約期間は複数年で、対象は世界全域。施策の効果検証でも協業する。

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着実に消費者データを増強させてきたWPP

WPPはここ数年間、オンライン広告枠を売る側、買う側との連携を強めてきた。同社のオンライン広告売買が本格化したのは、07年5月の24/7リ アルメディアの買収からだ。24/7リアルメディアは、オンラインメディアの広告販売収益を高める「サプライ・サイド・プラットフォーム(SSP)」を手 がけていた。

11年には一般企業向けに、オンライン広告を効率よく配信する「デマンド・サイド・プラットフォーム」を扱う部門として、「ザクシス (Xaxis)」を立ち上げた。24/7リアルメディアは13年12月、ザクシスに吸収合併され、さらに14年9月、ザクシスのSSP部門を広告テクノロ ジー企業のアップネクサス(AppNexus)に売却した上で、同社に出資。この間にもWPPは、広告テクノロジー企業10社ほどを対象に、買収・出資を 繰り返している。

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2013年6月には、もうひとつ大きな出来事があった。米ツイッターとの戦略提携だ。WPPグループが自社のデータ資産とツイート(投稿)のデータを統合し、マーケティングに生かすというもの。同時に、Twitterへの広告出稿支援も始めた。

2014年10月には、テレビ視聴率と消費者データの統合に乗り出す。グループエムとカンターによる、米メディア調査会社レントラック (Rentrak)との提携だ。レントラックはカンター子会社から米国のテレビ視聴率調査事業を引き受け、代わりにWPPはレントラックの株式を取得。通 常どおりの出資も行い、レントラックの持株比率を16.7%まで高めた。15年2月には、インターネット接触分析に強いコムスコアとカンターが戦略提携 し、同様にメディア接触データを強化した。

フェイスブックとの連携で、WPPが手にするものは

広告配信結果の検証データやメディア接触データを増強し続けてきたWPP。フェイスブックとの提携で目論むのは、14億人に上る利用者を基盤とした 定性的な消費者データの獲得だ。ビッグデータ分析会社データシフト(DataSift)を通じ、Facebook上で交わされる会話から、「トピックデー タ」と呼ばれる企業や商品への関心などを探る。例えば「湿度が高い日に、髪型がまとまらないことを嘆くFacebook利用者は、どんな層か」といったも のだ。

こうした「トピックデータ」を、例えばヘアスタイリング剤を扱う企業に提供し、広告のみならず、マーケティング全般に活用しようというのだ。

フェイスブックによると、利用者の会話データ分析では、対話ツールの「Messenger」は対象とならない。

「さらなるポイントは、データがクリエイティブや態度変容にどう関わってくるかだ」と指摘するのは、WPP傘下VML TOKYO代表を務める荻野英希氏。データから自動で消費者の心の動きを洞察するだけでなく、広告表現を生成したりテストしたりできるようになる可能性が ある。

米ビジネスインサイダー誌など複数のメディアによれば、WPPのマーティン・ソレルCEOは、英小売大手テスコ傘下ダンハンビーの買収にも興味を示 している。荻野氏も「自然な流れだ」と言う。ダンハンビーは、毎週10億個規模の商品購買データを集め、来店者の数や購入した品目などから購買パターンを 分析する企業だ。

この買収が実現されれば、オンライン・オフラインの垣根を超えた精緻なデータ分析と、マーケティングが可能になる。「デジタルマーケティング」という言葉がなくなり、「マーケティングは端からデジタルで行うもの」とされる日は近いのかもしれない。

WPPの2014年通期の売上高は、前年比4.6%増の115億3000万ポンド(約2兆1100億円)、純利益は10億8000万英ポンド(約 1980億円)。売り上げの36%は、デジタルによる収益となっており、比率はさらに高まる見通し。従来型の広告業を超えた新たなサービスの開発も重点目 標に掲げる。

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