世界的有名企業を救った“日本流の働き方”

右肩下がりを続ける株価、希望退職者を伴う経営再建など、とかくネガティブなニュースが流れることが多い製造業界。しかし、外資の積極的な攻勢にさらされ存在感を失う一途かと思われがちだが、日本の製造業のDNAは思わぬところで確かに息づいているという。
「実際、世界的に事業展開している有名企業でも、“日本流”の取り組みが行われています」と語るのは、トヨタの現場で培われてきた働き方「カイゼン」をテーマにしたビジネス小説『世界中で採用されているのに日本人だけが使っていない日本流の働き方』を刊行した原マサヒコ氏。
「トヨタと同じ自動車メーカーでは、ゼネラル・モーターズ(GM)が有名です。GMはカイゼンを導入したことで、未曾有の経営危機から復活したといわれています。あとは、コーヒーチェーンのスターバックスも作業の効率化のためにカイゼンを導入しています」
 海外の、それもまったく畑違いの業種でも取り入れられているというカイゼン。では、具体的なメソッドとはどのようなものなのだろうか。
「特別なスキルが必要なわけではありません。基本は業務に潜むムリ・ムダ・ムラを解消させることにあります。そのためにまず必要となるのが『5S』という考え方。これは『整理・整頓・清掃・清潔・しつけ』の頭文字で、カイゼンの基礎となるものです」
 まず「整理」は必要なものとそうでないものを区別して、不要なものを捨てること。「整頓」は「整理」ののちに残ったものをわかりやすく表示させていくことだそうだ。
「サラリーマンが一年の間にモノを探している時間は150時間と言われています。『整理整頓』を行うことでこの時間は一気に短縮でき、仕事の効率は驚くほどに変わりますよ」
 次の「S」は「清掃」と「清潔」。
「『清掃』と『清潔』、この2つの要素もついおろそかにしがちです。定期的に清掃することで身の回りをきれいに保つこと、清潔感を損なわぬよう自身の身なりを整えること。これだけで心身に与える影響の大きさは計り知れません」
 日々の心がけも習慣化しなければ意味がない。
「最後の『S』は『しつけ』です。これにはふたつの意味があり、ひとつめはビジネスマナーを身につけること。基礎的な社員教育を行う余裕がなくなった企業が以前に増して多くなったので、自分自身できちんとしたマナーができているか見つめ直す意識が大事です。そしてもうひとつ、これが一番大切なことですが、ここまでの4つの『S』を継続させる仕組みをつくることです」
 ルール化してしまうのが、もっとも手っ取り早い方法だと原氏はアドバイスする。
「たとえば、『毎週月曜の朝に身の回りを片付ける時間をつくる』といったように自分のルールを設けると続きやすいように思えます。『カイゼン』は何も製造業のためだけのノウハウではなく、すべての業種、すべての職種の人にとってタメになる働き方です。『5S』はカイゼンのなかでも本当に基礎中の基礎なので、自身の現状を少しでもカイゼンしたいと考えている人には、一から学ぶことをお勧めします」
 不景気な話題が続く日本の製造業だが、その現場で培われてきた伝統には計り知れない価値があるようだ。 <取材・文/日刊SPA!編集部>

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