2014年の「世界の都市総合力ランキング」で、東京が2008年の調査開始から7年連続で4位となった。1位は3年連続でロンドン、2位はニューヨーク、3位はパリで、ともに前年と顔ぶれは変わらなかった。
2020年の東京オリンピックをにらみ、安倍政権と東京都は東京の魅力を高めてパリを抜き、3位に浮上させる戦略を描いているようだ。果たして東京はパリを追い抜けるのか?
五輪開催でロンドンはトップになった
パリを抜く日も近い?(画像はイメージ)
パリを抜く日も近い?(画像はイメージ)
「世界の都市総合力ランキング」は、森ビルの寄付で設立された一般財団法人・森記念財団都市戦略研究所(竹中平蔵所長)が世界の主要40都市を対象に「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野で合計70の指標を設け、「都市の総合力」を評価している。日本初の試みで、政府や自治体の政策評価に活用されているほか、各界の有識者に助言を求める手法が評価され、都市の格付けでは世界4大ランキングのひとつに数えられるという。
東京は経済分野で「市場規模、経済集積、人的集積」が高く評価され、前年に続き1位、研究・開発分野も「研究環境」などが評価され、ニューヨークに次ぎ2位だった。しかし、居住分野は17位、交通・アクセス分野は10位、環境分野は9位と振るわなかった。「海外からの訪問者数が増え、国際会議の開催件数、ハイクラスホテルの客室数が増えた」ことから、文化・交流分野については前年の8位から6位に上昇した。
4位の東京に続くベスト10は、5位シンガポール、6位ソウル、7位アムステルダム、8位ベルリン、9位ホンコン、10位ウィーンだった。
今回の調査では、総合ランキング1位のロンドンが「海外からの訪問者数、美術館・博物館数などの指標を伸ばし、その地位を磐石なものにした」という。ロンドンは2012年にトップの座をニューヨークから奪い、今回もその差を広げたが、そのきっかけは同年開催のロンドン五輪だった。「五輪開催でロンドンのホテル総数やハイクラスホテル客室数、スタジアム数などが増え、世界的文化イベントの開催件数が増えた」というのが理由だ。
「世界で一番ビジネスしやすい都市」を目指す
そこで政府や東京都が狙うのが「東京五輪効果」による東京のランキングアップだ。東京圏では国家戦略特区を設け、官民を挙げた再開発プロジェクトが検討されている。土地利用規制の見直しなど大胆な規制改革を行う特区の目的について、安倍晋三首相は「東京五輪も視野に、世界で一番ビジネスのしやすい環境を整備することにより、世界から資金・人材・企業等を集める国際的ビジネス拠点を形成するとともに、創薬分野等における起業・イノベーションを通じ、国際競争力のある新事業を創出する」と主張。アベノミクスの成長戦略の起爆剤と位置づけている。
舛添要一東京都知事は「東京は海外との都市間競争にさらされており、それに打ち勝たなければならない。そのためには世界に開かれたグローバルビジネス都市に東京を大改造する必要がある」と力説している。東京都は特区を通じ、2016年までに外国企業を500社誘致するのが目標だ。
安倍首相は「世界で一番ビジネスしやすい都市」を目指すと言うが、同研究所によると、東京がロンドンを先例にインフラ整備や企業誘致を進めれば、「将来的に3位のパリを抜く可能性はある」という。ただ、そのためのハードルは低くない。
同研究所でランキングの調査に当たった市川宏雄理事(明治大学専門職大学院長)によると、東京が3位となるためには、1人当たりGDPを現状の1.03倍の9万8943ドル、スタジアム数を1.3倍の18施設、ホテル総数を1.8倍の722施設、国際線の直行便就航都市数を1.17倍の98都市、国際線旅客数を2.5倍の8295万4000人に増やす――など、数々の改善が必要になるという。
さらには居住条件や環境・交通面の対策など「暮らしやすさ」の向上も求められることだろう。果たして、五輪効果で東京の魅力が高まり、世界ランクでパリを抜くことができるのか。官民挙げた再開発の真価が問われそうだ。