中古マンション 「こんな物件を選んではいけない」10か条

首都圏や近畿圏の中古マンション市場が停滞している。新築市場のバブル化に吊られて表面的な売り出し価格は上昇しているが、成約数は多くない。また、成約価格と売り出し価格の乖離も目立ってきた。高値売却を諦めた売り手が、値引き要求を受け容れているのだ。

こういう時の中古マンション購入は、上手に動かないと高値でつまらない物件を掴んでしまう。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、中古マンション選びで「やっていはいけない10か条」を指摘する。

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(1)総会議事録の閲覧を渋る物件を買う

マンションの管理には区分所有法という「憲法」がある。そこに管理組合の総会議事録は利害関係者の請求があれば閲覧させなければならない、と定められている。

総会議事録は管理組合が年に1回開く総会での議案や決議内容、予算と決算などが出ている。いわゆるそのマンションの通信簿みたいなものだ。熟読すれば、そのマンションの置かれた状況のあらましが分かる。

中古マンションを購入しようとした場合、仲介業者に依頼すれば多少は面倒くさがられるがPDFで過去数年分を取り寄せてくれる場合がほとんど。

ところが、東京の湾岸エリアに立地するあるタワーマンションでは「過去1年分を書面で閲覧できます。コピーは不可」と回答される。そのマンション、実は数年前に大規模修繕工事の見積もりを大手ゼネコン5社に依頼したところ、すべて辞退された、という経緯がある。その間の事情が分かるであろう総会議事録は閲覧できないのだ。

このように、区分所有法で定められた議事録の閲覧を渋るマンションには、何か「不都合な事情」があると考えていい。そういうマンションは避けた方が無難だ。

(2)買い取り再販業者から買う

「当物件は当社が売主につき手数料不要」

中古マンションの募集チラシにそのような文言を見かけることがあるはずだ。その場合は次の様に翻訳する。

「当物件は当社が安く買い叩いて多少のリフォームを施し、仲介手数料の何倍もの利益を乗せた上であなたにお売りします」

そう言った物件の価格は、中古市場で最も高く取り引きされる水準に設定されている。決してお買い得物件ではない。

(3)リノベーション物件を買う

上記のような住戸を、1棟のマンションの中でいくつかまとまっているのがリノベーション物件。1棟丸ごと、というケースもある。そういう物件は、売主が業者だけに市場の最高水準価格であるケースがほとんど。

(4)10年以上管理会社が変わっていない物件を買う

マンション管理というのは日本の数少ない成長産業である。なぜなら、分譲マンションは増える一方なので市場規模はどんどん広がっている。しかも、管理会社が大手デベロッパーの子会社である場合、管理業務委託は自動的に受注できる。それも、キチンと利益がでる委託料での受注だ。

だから、新築マンションの引渡しが終わって管理組合の活動が始まると、管理業務委託料を軽減するために管理会社を変更するのが賢明な方策である。意識が高くて清廉、さらに実務能力の高い人が管理組合の幹部に就任した場合はほぼ、管理業務の見直しやコストカットのために管理会社変更を画策する。

仮に築10年以上のマンションで、過去に一度も管理会社変更の動きがなかった管理組合は、健全な活動をしてきたとは言い難い。歴代の理事長や理事が、なあなあの事なかれ主義で組合業務をこなしてきたか、何かの紛争があって重要な議案が通らない状態なのかのいずれかだ。

あるいは長期にわたって同じ人物が幹部として理事会を牛耳っている状況で、なおかつ管理会社変更の動きがない場合は、その人物と管理会社が癒着している可能性が高い。このように、管理組合が健全に機能していないマンションは、将来管理面で大きな問題が発生する可能性が高いので、避けるべきだろう。

ただ、最近は人手不足なので管理会社変更がビビッドなコスト軽減につながりにくくなっている現状がある。なので、3年以上過去の事績を見るべきだろう。

(5)管理費と修繕積立金が不自然に高い物件を買う

管理費や修繕積立金にはいちおうの目安がある。普通のマンションなら平米単価がともに200円。あわせて400円だ。70平方メートルなら2万8000円になる。

タワーマンションなら修繕積立金が平米単価300円くらいないと足りない、と考えられる。今後、建築関係のコストが低下することはなさそうだから、大規模修繕では複雑で高コストな作業が求められるタワーマンションの修繕積立金は、今後平米400円くらいに上昇しても不思議ではない。

しかし、管理費や修繕積立金が高くなると、中古マンションとしての魅力は薄まる。あまりランニングコストの高いマンションを買ってしまうと、売りにくくなる。

(6)管理費と修繕積立金が不自然に安い物件を買う

新築マンションを開発するデベロッパーは、売りやすくするために管理費や修繕積立金を出来るだけ安く抑えようとする。ただ、管理費には人件費や機械の保守管理費など最低限のコストが発生するので、不自然に安くは設定できない。さらに、管理費は子会社である管理会社の日常における基本的な収益だから、あまり圧迫できない。

だから、修繕積立金を低く設定して売り出す場合が多い。修繕積立金は通常の板状型マンションで平米単価200円程度が目安だが、これを60円や50円に設定しているケースをよく見かける。5年後に2割、10年後に3割、15年後に……と徐々に値上げをして、最終的には当初の3倍くらいする長期修繕計画が策定されていたりする。

修繕積立金が不自然に安い物件は、将来的に不自然に高くなる可能性が高いのだ。これは要注意。

(7)駐輪場が整然としていない物件を買う

中古マンションは「管理で買え」と言われることが多い。ある意味、正解である。しかし、管理はあまり外からでは分からない。

もっとも分かりやすいのが、掲示板と駐輪場。掲示板にきっちりと知らせるべきことが掲示されているマンションは、管理の質が高いと見做せる。同様に駐輪場が整然と使用されている場合も、管理が行き届いている証左。管理が乱れると。駐輪場が雑然となる。

(8)プールや大浴場のある物件を買う。

そもそもマンションとは「住む」という機能が中心の集合住宅である。そこにプールや大浴場は必要ない。バーやラウンジさえも不要。なぜなら、それは一部の人にだけ利用されるものだから、使用しない人がコストを払うのは不公平だ。

特にプールや大浴場はそれぞれ維持管理に年間数千万円もの費用が発生する。そして、将来のどこかで必ず使われなくなる。それらは豪華施設というよりも時限爆弾だ。

(9)外国人比率の多そうなマンションを買う

マンションは共同住宅であるから、共同のルールを守って暮らすところ。外国人が住んでいても、ルールを守ってくれる人々なら何の問題もない。

しかし、彼らの価値観が日本人と同じわけではない。そういう人々が多くなると、ルールを守らない人も交じってくる可能性が高い。

湾岸のあるタワーマンションでは、所有住戸で民泊行為を行っていたのはほとんどが外国人だったという。ラウンジで会費制のパーティを開いたり、ゲストルームをホテル並みの料金で「知り合い」に利用させていたりしたのも外国人。警戒するに越したことはない。

(10)管理組合の理事たちが頻繁に飲み会を開いている物件を買う

マンション管理というのは一種の利権である。500戸のマンションなら年間に1億円前後の予算を執行する。

そのことに気付いた悪意の人物が管理組合の幹部になると、必ず自らへの利益誘導を図る。外部にダミー会社を作って、そこに組合の予算が流れ込む仕組みを作るのだ。

そこまで悪質ではなくても、管理会社に過度な接待を要求するケースはよくみられること。

管理組合が腐敗しているかどうかを見分けるのは、総会議事録で「懇親会」などの支出が多くないかをチェックすること。あるいは管理組合のホームページなどで、懇親会の写真が表示されていると分かる。

管理組合の理事が頻繁に飲み会を開く必要性などまったくない。年に一度のお疲れさま会を自腹でやる程度で十分。過度な飲み食いは腐敗の温床となる。私の知る限り、健全な運営をしている管理組合ではほとんど飲み会などは開かれない。

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