政府が、電気自動車(EV)の中古市場の育成に乗り出すことがわかった。電池生産に必要な重要鉱物を中国などから調達していながら、中古EVの8割は輸出されており、重要鉱物が国外に流出していることへの危機感が背景にある。中古電池の性能を保証するサービスなどを導入して、EVの普及を図るとともに中古EVを国内で循環させ、経済安全保障を強化する考えだ。 【ひと目でわかる画像】EV市場活性化策のイメージ
経済産業省が民間企業を巻き込み、EVの中古市場育成と電池の二次利用の支援を始める。
具体的には、中古EVの電池の品質を保証するサービス作りを官民で進める。電池メーカーが電池の状況を診断し、損害保険会社が車の性能を保証する新たなEV向けの保険を9月に導入する。保証期間内に電池が劣化した場合は、新品の電池か同等のEVに交換できるようにする。保険は中古車販売業者への販売を想定し、保険料は1台あたり2万~3万円程度にする方向だ。
性能が劣化してEV用として使用できなくなった電池については、取り出してゴルフカートなどの小型車両で二次利用することも想定している。
日本は例えば、電池製造に必要なグラファイト(黒鉛)の9割を中国から輸入している。だが、昨年12月に中国が輸出規制を導入し、調達が不安定になっている。輸出規制は、日米欧が先端半導体分野で対中輸出を規制していることへの対抗措置とみられている。
EVは基幹装置である電池の劣化状況を判断しにくく、ハイブリッド車(HV)などと比べて中古として売却する際に価格が下がりやすいため、中古の大半は海外に渡っている。新車が普及しない一因にもなっている。
経産省は実証事業の支援対象に、トヨタ自動車とパナソニックホールディングスの合弁電池メーカー「PPES」や、SOMPOホールディングスの子会社、ヤマハ発動機などを選定した。実証事業の経費の最大3分の2を助成する。
政府は2035年に乗用車の新車販売の全てを、HVも含めた電動車にする目標を掲げており、電池の流通量は増加が見込まれている。日本総研は、中古のEV電池をすべて国内で循環できれば、関連市場は30年に約6000億円、50年には約8兆円に上ると予測している。