【北京=矢板明夫】中国政府は10日、「内容が公序良俗に反する」との理由で、ヒップホップ・ミュージックなど若者に人気の楽曲120曲の販売や放送、配 信などを禁止する処分を布告した。主な拡散ルートであるインターネットの管理と、音楽への統制をそれぞれ強化する目的だ。
中国文化省が公表したブラックリストには、張震岳など台湾の歌手の楽曲も含まれるが、大半は中高生など若者にファンの多い国内グループの持ち歌だ。
禁止された楽曲を歌詞やタイトルで分類すると、(1)社会への不満や批判(2)暴力の肯定(3)あらわな性表現(4)下品な言葉を含むナンセンスな内容-などの理由で引っかかったようだ。
「ミイラみたいに生きるのはゴメンだよ。生活っていう棺おけの中で、楽しいふりをするのは嫌だ」
中国の男性デュオ「新街口組合」が歌う「自殺日記」は、行き場のない若者の不満をこんな厭世(えんせい)的な歌詞で表現している。
ブラックリストに挙げられた楽曲は今後、放送やネットを通じた拡散が禁じられるほか、ダウンロードした場合も「厳しく処罰される可能性がある」という。
インターネットの掲示板には、政府の決定を支持する意見がある一方、「知らない歌ばかりだが、禁止されると逆に聴きたくなった」といった書き込みもあった。
北京の知識人は、「毛沢東が文化大革命を起こしたときも、芸術の自由創作の禁止から始まった。悪い予感がする」と話している。