中国の「抗日テーマパーク」を緊急リポート

「中国は米国と同等まで国力を高めてきた!」。そんなアピールたっぷりに中国・北京で3日 「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」記念式典と軍事パレードが行われた。中国が日本を根強く敵扱いするイベントはこうした記念式典だけではな い。子供たちが日常的に楽しむ遊園地やテーマパークでも反日教育が存在している。ノンフィクションライターのせりしゅんや氏が緊急リポートした。

深夜に着いた北京の安宿は受付の電気が消され、管理人が布団に寝転んでいた。そこで光るスマホから、けたたましい機関銃音、爆撃音、そして中国人たちの悲鳴が聞こえてくる。のぞき込めば、予想通りに映っていたのが、いかにも極悪そうな旧日本兵たちだ。

今年もすでに30以上の作品が放送された抗日戦争のテレビドラマに見入っていた。しかし、管理人は筆者が日本人だと気づくと、日本のアニメについて語りだし、一応のマナーとして抗日ドラマを切った。

ちなみに、抗日戦争ドラマの内容は、共産党に指導されたひと握りの農民たちが日本軍の大部隊を全滅させたり、美人スパイが日本軍の司令部を一網打尽にするとか、荒唐無稽なものも多い。こうした作品が多数作られる背景には、共産党政府による様々な締め付けがある。

ドラマの制作現場では、手っ取り早く視聴率が稼げて、何より政府の検閲に引っかかりにくい抗日戦争を描くことが流行している裏事情もあるようだ。だからといって中国の日本への意識は否定的なものばかりではない。肯定的なものが入り交じっているのだ。

子供から大人まで、日本人を「日本は鬼の子だ」「生意気な小犬だ」と敵視する一方で、文化面では最大の手本にもしている。今も中国は日本の文化レベルをう らやみ、認めたくない“越えられない壁”を感じているのは確かだ。それでも壮大な多民族国家を結束させるために、日本は仮想敵国として好都合だった。

2011年、人民解放軍の前身・八路軍と日本軍の戦いをモデルに中国中部・山西省武郷にオープンした「遊撃戦体験園」も、国から“愛国教育基地”に認定されているため、学校教育との連携が堅固だ。5億元(約95億円)を投じて建設された。

このテーマパークでは、山賊のように村で暴れる日本軍を、ゲーム感覚で子供たちにやっつけさせ、楽しく愛国心を植え付けることができる。ネット上では「八 路軍太行記念館(抗日記念館)」に隣接した文化園が、このテーマパークだと混同されているが、実際の「遊撃戦体験園」は文化園から40キロも山奥に行った 先にある。

しかも、バスなどの移動手段はないため、これまで日本人旅行者がたどり着くのは困難だったようだ。筆者はチャーターしたタクシーでようやく体験園にたどり着いた。

基本的には、ありきたりの遊園地を日中戦争テーストにしているだけ。お化け屋敷のお化けが日本軍だったり、射的のマトが日本軍人の顔だったり、サバイバルゲームの敵役が日本軍だったり…。

お化け屋敷もある意味では傑作で、八路軍の掘った秘密経路で、日本軍が脅かしてくるのではなく、モタモタしていると空襲警報と爆撃音が鳴るのみだった。

日本軍とレーザー式の銃撃戦ゲームを楽しむサバイバル・アトラクションでは、係員から「日本軍をやってもらえないですか?」と頼まれた。そして筆者はひたすら中国人の少年たちから集中砲火を浴びるハメに。少年たちが、楽しんでいたことは言うまでもない。

決着後、ご父兄から「息子たちと一緒に写真を撮ってください」と記念撮影。係員からは「この施設にどんな印象を持ちましたか」と聞かれたので「路上で大便 をする子供とそれを容認してしまう親が多すぎです」と指摘してみると、係員は「我々はもっと成長していかなければならない」と強く反省していた。

果たしてこれは反日活動への加担か、それとも日中親善だったのだろうか――。

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