中国のコロナ対策が荒っぽすぎる!非人道的なペットの「無害化処理」も

10月頃から、中国の各地で再び、新型コロナウイルス感染者関連の話題が絶えず流れ始めた。中国では、中央政府も地方都市でも、かなり“荒っぽい”感染対応策が普通に行われる。SNSや現地メディア記事から、気になる動きをまとめてみた。(フリーランスライター ふるまいよしこ)

ハロウィーンの上海ディズニーランドで 突然「入園者全員PCR検査」

 10月の緊急事態宣言解除以来、新型コロナウイルスの新規感染者が大幅に減少した日本。とはいえ、冬入りを目前に、第6波への「備え」が話題に上り始めている。一方中国では、一足早く秋頃からまた感染者関連の話題が絶えず流れてくるようになった。

 10月31日、上海ディズニーランドへハロウィーンを楽しみに来ていた人たちが、さぁこれから!という午後6時になって「入園者全員にPCR検査を行う」という通知を受けた。この日の入園客は4万6000人。すでにこの時点で退園していた客を除き、最終的に3万7000人が検査を受けた。

 この間、ディズニーランドでは恒例のパレードや、観客が心待ちにしていた花火を打ち上げて、検査の順番待ちの客たちを楽しませたという。また、長蛇の列に並ぶ入園客らに職員が「待っている間、木馬に乗りませんか?」と声をかけたりして、客が待ちくたびれるのを防ごうとしたらしい。

 後日、これらの対応は「さすが上海だ」などと大絶賛された。筆者などは「ディズニーランドだからできたことなのではないか?」と思うのだが、ここでアメリカ産エンターテインメントにお株を取られるのがやっぱり嫌で、「いやいや、我が国だって捨てたものじゃない」と思いたかったのだろう。

 というのも、中国国内の感染対応策にはネガティブイメージばかりがつきまとうからだ。

雲南省瑞麗市がロックダウン

 10月末に、SNSの「微博」(Weibo、以下、ウェイボ)に突然、「雲南省瑞麗市が半年以上ロックダウンされている。もう限界だ、助けて!」という複数の声が流れて、何も知らなかった全国の人たちをびっくりさせた。同市はミャンマーとの国境にあり、国境のすぐそばの街にはミャンマーから持ち込まれた翡翠(ヒスイ)の市場が設けられ、日頃は中国各地からやってきた買い付け業者たちで賑わっている。

 その国境の街と市内を結ぶ橋が今年3月末に突然封鎖され、市内に住む商人たちは自宅に帰れなくなった。ほぼ同時にミャンマー人商人たちも皆、国境から追い出され、残った中国人商人たちは店舗用の建物に寝泊まりして過ごしているという。

 書き込みによると、ロックダウンはこれまで数回にわたって行われ、その間瑞麗市民は仕事にも学校にも行くことを禁じられ、2日に1度のPCR検査に出かける以外は外出できない状態となっている。ネットにその窮状を書き込もうとしても、「なぜか」書き込めず、今回散発的に流れた書き込みは市外に住む同市出身者が家族のために書き込んだものだったようだ。

 書き込みが大きな注目を集めると同時に、同市の元市長で現在は作家生活を送る戴栄里氏が、自身のオンラインコラムで「瑞麗には祖国の思いやりが必要だ」という記事を発表。日頃は翡翠の売買で大変潤っている同市が、ロックダウンによって経済活動が完全にストップしており、人々の生活の維持と精神衛生のためにも生産と貿易の回復は必須だと訴えた。

 これらを受けて同市政府当局は記者会見を開き、政治混乱が続くミャンマーから同市へと国境を出入りする関係者のうち感染者が20%に上っており、7月の検査では700人以上の陽性者が見つかったと背景を説明。また、数十万ものアクセスを集めた元副市長の記事に対し、「記事に描かれた経済事情はずっと昔の話で、今ではずっと発展しており、十分経済的に潤っている」と困窮説を否定した。

 だが、これとほぼ同じ頃に翡翠市場の街では商人たちが政府に補償を求めてデモを行っていたことを、香港メディアが写真付きで伝えている。

 その後、瑞麗からの声はネットに上がらなくなり、その後同市の住民たちがどうなっているのか、外界には再び流れてこなくなってしまった。

北京に近い北方省で感染者が増加中

 一方、ロシアと接する黒竜江省黒河、そしてモンゴルと接する内蒙古自治区エジン旗でも、それぞれ隣国から持ち込まれたとされる感染の拡大防止が叫ばれている。

 特にこの2つの北方省は首都北京にも近く、日頃から経済や人的往来も頻繁である。北京ではこの11月初めに中国共産党中央委員会第6回全体会議(6中全会)という大型の政治会議があり、これからは冬季オリンピックという重要イベントも控えている。このため、その感染者の増加事情は日々注意深く報告されている。

 感染抑制圧力にさらされているだろう黒河市政府では、市民の外出を規制しようと驚くべき方法を採った。移動の際に提示しなければならないスマホの「健康コード」を、市内居住者のみならず、同市に戸籍を持つ出身者のものまですべて、「要隔離」を意味する“黄色”に変えてしまったのだ。

 中国では、日本のように引っ越したからといって戸籍は個人の意思では簡単に移せない。つまり、他市に暮らすようになっても出身者の多くは市内の戸籍を残したままだ。そんな人たちの健康コードまでが黄色表示にされてしまったことにより、大混乱が起きた。

 黒河市では一応、市外に住む人たちのコード解除受付ホットラインを準備したものの、そこにも希望者が殺到してつながらないと、これもまたひと悶着(もんちゃく)を引き起こしている。

 瑞麗といい、黒河といい、地方政府による粗暴で一方的な管理手法、そして起こった大混乱は中国「あるある」だ。中央政府が掲げる「新型コロナ・クリーンゼロ目標」達成のためには、どんな荒業でも取らざるを得ないということか。

北京でも、健康コードを「有効活用」

 その中央政府のお膝元、北京でも実は健康コードが「有効活用」されていることが次第に分かってきた。

 10月末から11月初めにかけて、複数の北京在住の人権弁護士が地方の依頼人に会いに出かけて北京に戻ろうとしたところ、突然その「健康コード」が緑から赤(新型コロナ患者の未治癒者や発熱者、陽性患者などで移動に適さない)に変わり、北京入りができなくなったのである。

 ある人権弁護士は、山西省で刑事事件の公判前聴取のため勾留された依頼人に会いに行った助手が、帰京しようと駅に向かった途端、健康コードが赤に変わり、電車どころか駅構内にも入れなくなってしまった。慌てて近くの病院でPCR検査を受け、その陰性結果を持って駅に行ったが、やはりコードは赤のまま。仕方なく列車をキャンセルして、翌週の公判に出席する弁護士を待って裁判に出席した。しかし弁護士の健康コードも赤に変わり、1週間の公判終了後、2人はいつ北京に帰れるのか分からないという。

 また、人権弁護士の王宇さんも10月中旬に北京から瀋陽に出張したが、帰京のための列車内で北京入りのための健康コードが「申請できなくなった」という。仕方なく途中の天津で下車したまま様子見をしているが、半月以上も北京に戻れない状態が続いていると訴えている。

包龙军被健康码设置不准回京,谢阳健康码莫名变红,探望张展计划不得已泡汤,防疫已经变成防人了,今后还会发生什么,天知道! pic.twitter.com/tJsPj8TJEi — 文东海 (@KffgRuI5SnyvoWD) 2021年11月6日

 王さんの夫でやはり弁護士の包龍軍さんも出張先の蘇州で、北京に帰るための健康コードの選択項目が表示されず、飛行機にも列車にも乗れない状況が続いていると動画付きで、友人がTwitterで明らかにした。

 北京だけではない。ディズニーランドでの対応が大絶賛された上海でも、同地を訪ねようとした湖南省の弁護士・謝陽さんが、やはり健康コードが原因で飛行機に乗れなかったことを明らかにしている。

 謝さんは、昨年の武漢で逮捕され、懲役4年の判決を受けたフリージャーナリストの張展さんの母親を訪ねるところだった。張さんは獄中でハンストを続け、現在その健康状態が大きな注目を浴びている。彼女の支援を続ける謝さんは上海行きの飛行機に乗るために空港に着いた途端、コードが「移動禁止」を告げる赤に変わった。仕方なく自宅に戻り、訪れるはずだったPCR検査担当者を待っていたところ、コードは再び緑に戻ったという。

 上記関係者は皆、「感染拡大地域に足を踏み入れていないし、周囲にも感染者はいない」と異口同音に主張しており、移動を制約される理由はないと述べている。

「健康コードは慎重にテクノロジーに基づいて運用されるべきであり、党の手下になってしまってはならないはずだ。だが、異見者の行動を制限するツールになってしまっている。法廷でこの件の有効性を問う必要がある」(謝陽さん)

 6中全会も閉幕し、これらの人たちもそろそろ移動が解禁になっているはずである。だが、同じような事態が今後も容易に起こるだろうことは大きな懸念材料となっている。

市民の移動を止めるために、町中の信号機を赤に変えた

 上に書いたディズニーランドのPCR検査では、全員陰性という結果だった。そのため「この大騒ぎは必要だったのか?」という声も流れている。

 というのも、この騒動のきっかけになったのは、10月末に江西省で感染者が見つかり、その濃厚接触者が10月30日、つまりハロウィーン前日に上海ディズニーランドを訪れていたことが分かったからだった。当の濃厚接触者は31日の朝に上海から帰宅する途中の高速鉄道で途中下車させられて検査を受け、陽性であることが明らかになった。そこからディズニーランドに連絡が入り、大検査となった。つまり、その前日にこの陽性者がディズニーランドを楽しんだときに接触した人たちはとっくに園外に散らばっており、それでもその翌日に園内にいた人たちに検査を行ってみせたのである。

 当の感染者が見つかった江西省上饒市ではまず市民の移動を止めようと、なんと町中の交通信号をすべて赤に変えた。これは大批判を浴びて措置はすぐに中止されたが、市内の感染が収まらなかったことで、再び大騒ぎを巻き起こした。

ペットのコーギー犬に「無害化処置」

 11月12日、同市内の金鳳花園団地が要注意区域に指定され、全住民にホテルへの集団隔離が言い渡された。その際、ペットの同伴は禁止とされ、各戸では立ち入り消毒が行われるものの、きちんとつないでおけば消毒責任者はペットには手を付けないことが約束されていたという。

 しかし、12日午後、隔離先で自宅内をペットカメラで見守っていた住民が、自宅に入ってきた消毒担当者がつないでおいたペットのコーギー犬に棒を振り下ろすのを目撃した。カメラを通じてすぐさま抗議したところ、相手は「上司からその場で処理しろといわれている」と言い、暴れてひもが外れてカメラの外に逃げ出した犬を追いかけた。その後小さな鳴き声がした後、画面には黄色いゴミ袋を手にした担当者らが現れたが、その後コーギーの動向が分からないとウェイボで訴えた。

 この書き込みはあっという間に拡散され、大論争を引き起こした。それに加えて、やはり金鳳花園の別の住民からも「飼っていた犬や猫を殺された」と訴えが上がり始めたのだ。

 実はそれまでにも、黒竜江省や成都市などでは別所隔離中の飼い主の同意を得ずにペットが処分されるという事件が起こっていた。中国ではここ10年ほどペットブームが広がっており、ネットショッピングで最も売れ行きが好調な商品はペット関連用品だといわれるほど、一大産業となっている。農村地帯ではまだまだ動物は「家畜」レベルだが、都会ではペットがすっかり家族同然になっていることも珍しくなく、先のコーギー犬の飼い主の「わたしは通告に従っておとなしく隔離を受け入れているのに、なぜこんな目に遭わなければならないの?」という嘆きに、全国のペット愛好家が怒りを爆発させた。

 巻き起こった怒りの声に、慌てた同団地の担当責任者は声明を発表した。

「現場の作業員は当該ネットユーザーと十分にコミュニケーションを取らないまま、ペットの犬に無害化処置を行った。目下、本所は当該関係者に批判を行い、担当部署を異動させ、当事者に対して誠意ある謝罪をするよう命じ、すでに当該ネットユーザーの了解を取り付けた。同時に当事者もまた感染期における感染防止措置に理解を示した」

 ペットを無断で殺傷処分にしておきながら、「無害化処置」とは? 「当該ネットユーザー」は怒りの声を上げているのに「了解を取り付けた」だって? これが相変わらずの当事者不在の「お上の弁解」であることは一目瞭然だった。

 その後、コーギー犬の飼い主は「勤務先を通じて、これ以上騒ぎ立てるならクビにすると脅された」と言い、また飼い主の書き込みを転送していたユーザーも「書き込みを削除しろと電話がかかってきた。わたしの本名を読み上げ、自分のことを『一介の市民』とだけ名乗る、気持ちの悪い電話だった」と書き込んでおり、「進展が特になければ、今後書き込みはしない」と沈黙してしまった。

 こうした事例が紹介されるたびに、人々は身の回りの権利が緊急事態を理由に削り取られていることを実感している。まき散らされているのはウイルスだけではない。当局の粗雑で、非人間的な扱いに対する不信感もまた、膨れ上がっている。

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