中国主導「BRICS開発銀行」創設 習近平“カラ騒ぎ”勝算

 BRICSの5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が、世界銀行と国際通貨基金(IMF)の代わりとなる新開発銀行と外貨準備基金の創設で合意した。中心となるのは、新開発銀行の本部を上海に持ってきた中国。「ドル基軸を決めた戦後ブレトンウッズ体制への挑戦」なんて見方も出ているが、はたして内実は――。
 中国の習近平国家主席は、今回の合意について「国際金融におけるBRICSの発言権向上に有益なだけでなく、われわれや途上国の国民に利益をもたらす」と強調した。途上国にとっては、世界銀行やIMFよりも使い勝手が良く、政治の腐敗や環境に関する厳しい支援基準は設けない見通しという。メキシコやトルコ、インドネシア、ナイジェリアなど、ほかの新興国の参加も見込んでいる。アルゼンチンやベネズエラなど南米の反米の国々も取り込んでいく方針だ。
 本格稼働すれば、新興国のカネが中国に集まり、中国から途上国にカネが流れていくことになる。米国を中継しない資金が世界を駆けめぐるのだ。規模が大きく膨らんでいけば、米国主導の国際金融秩序も揺らぐことになりかねない。
 もっとも、同志社大教授の浜矩子氏(国際経済学)は、「興味深い取り組みではあるが、相変わらず資金をドルで積み上げるのなら面白味に欠ける。秩序への挑戦が本気ならユーロや円、あるいは元やルーブルを使うべき」と指摘した。米主導にチャレンジする強い姿勢を見せてはいるものの、ドルのくびきからは逃れられない現実。拓大教授の富坂聰氏(現代中国)も、「中国を中心とした新興国と、そのほかの途上国が集まっても規模は知れています。現状では米国主導の国際金融秩序から外れられないでしょう」と言う。
■国際金融秩序への挑戦
 それでも新たな仕組みを構築するのは、勢いを失った新興国の不安の表れだ。
「新興国の経済が上向いたのは、先進国の“余りガネ”のおかげです。行き場を失った投資マネーが、途上国に流れ込みバブルを生んだ。でも、状況は変わってきました。投資の一巡で新興国の成長は鈍化している。BRICSの中では好調を維持する中国も例外ではありません。カネと工場の中国離れは進み、タイやベトナム、インドネシア、ミャンマーにシフトしています。ヒト・モノ・カネが“老舗の新興国”から逃げ出している。だから、先進国にぶら下がらなくてもスムーズに資金を調達できる仕組みが必要になっているのです。内心の不安を隠すため、国際金融秩序への挑戦を演出しているように見えます」(浜矩子氏)
 中国は西側諸国から国有企業の改革などを求められている。それをかわす狙いもあるようだ。
「社会主義国家の伝統的な体質にメスを入れるのは簡単ではないし、守っていきたいところもある。自国のやり方を壊さずに先進国と渡り合うためには“仕掛け”が必要なのです」(富坂聰氏)
 習主席は、中南米メディアとのインタビューで、「国際政治体制の整備、発展途上国の発言権の拡大に力を入れる」と訴えた。中国主導の国際秩序の構築を目指すと宣言している格好だが、道のりは遠そうだ。

タイトルとURLをコピーしました