2015年の流行語大賞に選ばれた「爆買い」。これは中国人観光客が電化製品などを大量購入することを指す言葉だ。観光庁の2015年速報値によると、中 国人訪日観光客の1人当たりの旅行中の支出額は平均28.4万円というから驚きである。去年の勢いそのままに今年も…と思いきや、その消費行動には変化が 表れている。
「『爆買い』から『爆体験』にシフトチェンジしているんです。何度も日本に来ている中国人観光客は、商品を買い尽くした結果、ショッピングに飽きてしまい、日本でしかできない体験をするようになっています」
こう答えてくれたのは、長年中国で取材を行い、中国人の行動や考え方に詳しいノンフィクションライターの中田秀太郎氏。
「人気があるのは、警察博物館や紙幣博物館といった無料で見学できるスポットです。観光客が訪れるのは主に都市部ですが、ちょっと足を延ばして高知県・四万十川でのカヌー乗船、アニメの聖地巡礼といった観光を堪能する人も増えています」
なるほど、日本人の国内旅行と同じ感覚で“体験”を楽しむようになってきたということか。しかし、こんな一般の観光とは違う「体験」を求める人も少なくないという。
「が ん検診や人間ドックツアーに参加する人が急増していて、予約は中国人観光客でいっぱいのようですよ。2014年度に医療目的でビザを発給した外国人は 611名、そのうち507名が中国人。日本医療が彼らの間で人気を博していることがうかがえます。実は中国国内では病院に患者がどっと押し寄せている状態 で、相対的に医者が足らず、病院で長時間待つことは当たり前。そのうえ中国に比べ、日本の医療技術は発達しているので、大金を払ってでも…という人が多い ようです」
また、中国では一部地域を除いて、ギャンブルが禁止。そのため競馬やパチンコを堪能するツアーも好評なのだという。ほかにも、日本のキャバクラ・風俗ツアーも行われている。
「日 本のアダルトビデオは中国で大人気。AVのような世界を体感したいと考える観光客が、全国の風俗に押し寄せているんです。そういった事情もあって、外国人 NGだった吉原でも訪日外国人の団体を受け入れる店や、トラブルを避けるため、中国語表記の注意書きを掲示する店が増えています」
ただ、あまり歓迎できない影響も。東京や大阪、京都といった主要都市のホテルでは、予約が取りにくく、宿泊できないという事例も発生。ホテル以外にも、飲食店やレジャー施設などでも同じような影響が十分に起こり得る。
単 純な観光だけにとどまらず、ありとあらゆる体験を堪能している中国人観光客。観光局の発表によれば、2015年の訪日中国人数は約500万人、2016年 は前年に比べて1月、2月は約66.4%増加しており順調な滑り出し。この勢いが継続すると、去年の「爆買い」に続き、今年も「爆体験」に注目が集まりそ うだ。
(布施貴広/Office Ti+)
(R25編集部)