日本有数の夜の繁華街、新宿・歌舞伎町の入り口にそびえる「歌舞伎町一番街」のアーチそっくりの看板を掲げ、鉄腕アトムや犬夜叉などの人気アニメキャラクターの看板が登場し、「日本の街並みが中国に出現した」として多くの日本ファンの若者を集めていた中国広東省仏山市の通称「一番街」が、オープンからわずか2か月あまりで、閉鎖に追い込まれていたことが明らかになった。
香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が報じたところによると、仏山市政府が運営会社らに命じたという。表向きの理由は「多くの日本のアニメのキャラクターなどが使われており、知的財産権の侵害に当たる」としているが、地元住民は「中国政府から内々で『中国の街なかに、日本の街を再現することで愛国教育を妨害する恐れがある』との注意を受けたようだ」などと話しているようだ。
仏山市の中心部にある約100mの一番街通りには、多くの電飾がかけられ、ビルには日本語で書かれた看板が並び、日本で使われている信号や道路標識も本物そっくりに作られていた。今年8月にはほぼ完成し、新型コロナウイルスの旅行制限のために海外旅行ができなかった多くの中国の若者が訪れ、撮影した写真がSNSで人気を集めて、仏山市での人気観光地となっていた。
しかし、いまでは通りの入り口はテープとバリケードで封鎖されおり、警備員が24時間体制で監視。閉鎖されたことを知らない観光客が写真を撮ろうとしたり、バリケードを乗り越えて通りに入ろうとしたりすると、警備員が制止するという。
ある警備員はサウス紙の取材に対して、「通りがいつ再び一般公開されるかは分かりませんが、そのためには『一番街』という名前を変えて、アニメキャラクターも著作権侵害に当たらないようにする必要がありますね」などと語ったという。
この「一番街」は地元の不動産デベロッパーによって建設されたもので、通りがすべて完成していたわけではないが、すでに店舗はほとんどが埋まっている状態だった。
一番街通りに日本風の喫茶店を経営していた男性によれば、通りが封鎖されたのは、中国の建国記念日の国慶節(10月1日)で、日本との歴史を考えると政府としては都合が悪かったのではないかと見ているという。この経営者は、大型連休で多くの観光客が来て商売が繁盛すると思っていたが、当てが外れてしまい、肩を落としていた。